ご挨拶

具志川村長
内間清六

主催者の一人として、 一言ご挨拶申し上げます。

 本日は時節柄、 ご多忙の中ご来場いただき厚く御礼申し上げます。 又、 米国は、 CDCのトーマス・リーブス氏には、 遠路のご来島に深く敬意を表すと共に、 合わせて全国各地から、 枉げて、 ご参加いただきました皆様にも心から歓迎の意を表します。

 さて、 具志川村が、 一開業医の熱い思いに心動かされ、 行政の場から慎重に検討を重ねながら、 保育所・学校現場で、 フッ化物洗口を実施したのが、 平成3年2月のことでした。 当時のことを今、 振り返って見ましても、 決して穏やかなスタートではなかったことを鮮明に覚えています。

 あれから十年、 幼児、 学童の口腔は、 関わって来られたスタッフの皆さんの熱意とともに年々改善され、 今では、 全国に誇れる素晴らしい成果を得ることが出来ました。 そこには、 子を持つ親の並み並みならぬ努力と、 村民各位の大きな支援があったことを決して忘れてはいません。 フッ化物応用のもたらす口腔保健への影響力、 このことについては、 私、 門外漢ながら、 一言申し上げたいと思います。

 20世紀初頭に、 イタリア・ナポリ周辺の斑状歯の発見に端を発し、 疫学研究の積み重ねから見い出され、 今や水道水フッ化物の濃度調整は、 文明社会に於けるう蝕予防の最も優れた、 ごく自然の公衆衛生手段として、 正に国際的な広がりを見せています。

 このことは、 全世界のパイオニアを努めた米国、 グランドラピッズの苦労を置いては語れないであろうことを、 私自身が今、 肌で感じ、 57年前のグランドラピッズに、 思いを馳せているところです。

 私は、 日頃から機会あるたびごとに我が具志川村民に、 声を大にして申し上げていることは 「健康こそが何にも代えがたい村の大きな財産である」 と言うことであります。 そのための先行投資は惜しみなくやることが、 私の行政方針であり又、 終始一貫として実行して参りました。

 国は新世紀に向けて、 新たな方針を打ち出したのが2000年4月の 「健康日本21」 であり、 地方計画の策定を、 各都道府県に強く呼びかけています。

 当時の厚生省、 担当課長は 「健康日本21」 は、 公衆衛生の新しい流れを提唱するものです。 その成功の鍵は、 実行性に富んだ魅力的な地方計画の策定であり、 地域保健、 公衆衛生の扉が開かれるはずと訴えています。

 地方分権の時代を迎え、 地方自治体の自主性及び、 自立性が求められている中で、 個性豊かで活力に満ちた島づくりを図るためにも、 フロリデーションは、 何としても実現しなければならない私の重要施策の一つであります。

 一月後には、 我が久米島は、 一島二村の長い歴史に幕を閉じ、 新生久米町が誕生します。 時同じく、 この問題に取り組んで来たわけですが、 全国に先がけ旗振り役を演じることに、 決してこだわるものではありません。 予防重視の時代なかんずく、 う蝕予防の最も有益な方法としてのフロリデーションに関する情報提供や議論が、 公の場でほとんどなされて来なかったことが、 次なる進退に窮することになり、 国、 県、 そして関係機関への支援要請に始まり、 今日に至った訳でございます。

 これからの地方公共団体に求められるのが、 自主、 自立とすれば、 国、 県の制度のみに、 依存することなく、 過去、 現在の状況を見極めながら未来へ向け、 独自の確かなる道標を立てていくのも又、 私たちに課せられた重要な使命ではなかろうかと考えています。

 今日、 この機会、 一日千秋の思いで待ち続けて来ただけに、 今、 新たなる感動を覚えています。 いや、 私以上に本日ご臨席の、 厚生労働省 瀧口課長を始め強い信念で、 長年調査、 研究や啓発活動に奔走して来られた多くの先生方には、 WHO加盟国日本のフロリデーション実現に向けての船出が、 ここ具志川村から始まろうとしていることも含め、 終生忘れることの出来ない記念すべき日、 として強く脳裏に留めていただけるものと思います。

 この度は厚生労働省、 沖縄県、 沖縄県歯科医師会の英断と、 各関係機関及び、 東京歯科大学名誉教授の高江洲先生を中心とした全国各地でご活躍の多くの先生方の支援のお陰で、 滞りなく計画を推進して来ることができましたことを、 ご報告申し上げます。 更に、 米国、 韓国をはじめ、 全国各地からの心温まる一千通を越える支援メッセージ、 中にはフロリデーションに認識のある方々のひたむきな思いも綴られており、 改めて責任の重さを痛感しているところです。

 日本の将来、 そして二十一世紀の健康づくりを真摯に模索していた全国の仲間が、 大きな輪を作りつつあり、 確実に歩み出したことは、 私達にとりましては何にも変えがたい大きな原動力となっています。

 どうか、今後とも尚一層のご支援をお願い申し上げます。おわりに、このシンポジウムの企画から開催まで、ご苦労いただきました関係各位、ご来場の皆様の益々のご健勝と全国民が8020目標達成へ向け、一日も早く、大きなうねりと成らんことを念願し、私の挨拶と致します。