「富岡甘楽地域における歯科保健の現状と課題」

社団法人富岡甘楽歯科医師会
公衆衛生担当理事  黒 澤 良 介

 

はじめに

富岡甘楽歯科医師会(会員38名)は、現在、平成4年5月に完成した富岡甘楽口腔保健センターに事務局を置き、地域歯科保健の充実をめざしています。また当歯科医師会には常勤歯科衛生士3名(1名は主に事務担当)が勤務し、管内の歯科保健事業に従事する歯科衛生士のリーダーとして、地域歯科保健活動の原動力になっています。

富岡甘楽歯科医師会は、平成5年に8020運動を含む公衆衛生活動の目標を具体化した「各ライフステージにおける歯科保健対策」(表1)を立案し生涯を通した歯科保健の確立をめざしています。その対策の内容は、妊婦期の歯科保健指導に始まり、乳歯のむし歯予防対策、永久歯のむし歯予防対策、児童生徒の歯肉炎予防対策、成人・高齢者の歯科保健対策、歯科訪問診療、訪問口腔衛生指導、心身障害者(児)歯科診療までを含む総合的なものです。その中でも子供たちのむし歯予防を含む歯科保健対策は、その後の歯科保健対策の基礎となる、最も重要な課題として位置づけられています。子供たちのむし歯予防を含む歯科保健対策の成否が、その後の歯の寿命に大きく左右します。

今回、当地区の主な事業成果、今後の課題について述べ、健康日本21富岡版策定にあたり、市民の健康増進に役立つことを切に望みます。

 

【中略】

 

まとめ

8020の実現のためには、歯を失う原因の約9割を占めるむし歯と歯周病に対する効果的な予防対策の実施が必要不可欠です。富岡甘楽歯科医師会は、効果的なむし歯予防対策の確立のためには、フッ化物を利用した各種むし歯予防対策〔フロリデーション、フッ素洗口、フッ化物配合歯磨剤の利用、フッ素塗布など〕の普及が必要不可欠だと考えています。また、歯周病予防対策としては、学校歯科保健での歯肉炎予防対策の充実、市町村や職場での成人歯科健診の充実、「かかりつけ歯科医」の機能を活用した予防対策の推進などが重要だと考えています。

今後、富岡甘楽地区においては、遅れが目立つ学齢期のむし歯予防対策の充実、さらには、最も優れたむし歯予防対策で、各種フッ化物利用の原点でもあるフロリデーションの実施等を視野に入れた活動が必要になると考えています。フロリデーションが実施されれば、子供から成人、高齢者、自分自身で口腔内の健康管理が十分にできない心身障害者まで、給水地域で生活する住民すべてが、その恩恵を受けることができます。さらに、フロリデーションの実施により、生涯にわたるむし歯予防対策が確立され、今後の8020運動推進のための基盤が整備されると考えています。