ご挨拶
厚生労働省医政局歯科保健課長
瀧口 徹
今日は全国から、 熱心な方々、 それから何より久米島の皆様方、 本当にサトウキビの今大事な時期にお集まりいただき、 本当にご苦労様です。
今日、 私は、 国の立場として、 具志川村、 それから県、 県歯科医師会の主催で行うこのシンポジウムが、 何をもたらすかということについて考えながら、 私どもの考え方をご披露したいと思います。
西暦2000年のWHO (世界保健機関) の報告によりますと、 1999年のわが国の平均寿命は男女とも世界一でございます。 加えて健康寿命も世界一でございます。 健康寿命というのは、 痴呆や寝たきりにならないで自立して暮らせる期間を示して、 平均寿命と6〜7年の差があります。 私どもが注目しているのは、 21世紀が高齢社会になりますのは明らかですので、 そのための方策として 「健康日本21」 という国民運動を展開して、 生活習慣病、 つまり、 心臓病、 癌をはじめ歯科の問題も含めまして、 第1に疾病の発生を予防することが重要であると考えております。 2番目には、 平成12年にスタートした介護保険の充実により、 寝たきりになった方、 痴呆や怪我などいろいろな理由により後遺症による要介護者などへの介護サービスの充実でございます。 3番目は、 医療の世界の中に根拠に基づく医療を行い、 伝承・伝え聞いたことだけではいい医療、 科学的な医療はできないこと、 Evidence based Medicine、 (根拠のある医療) を国民に提供しなければいけないということで、 医療の質の向上に関する問題です。 歯科に話を移しますと、 生涯自分の歯で食事をすることは生きがいの一つでありますし、 そのことが健康維持・回復にも関係することが科学的にも確認されてきています。 こういった状況の中で歯が抜けることを予防することが大事です。 80歳になっても20本以上の歯が残っていますと、 酢だことかたくわんのように軟らかさと硬さの両方持った粘弾性の食品もうまく噛めるのです。 要は、 歯が残っていないとどうしようもないということです。 そのため、 私どもは8020運動を展開しているわけです。 とくにフッ化物を利用した場合、 中でも水道水のフッ化物濃度を調整してむし歯予防をした場合に、 生涯にわたって最も効果的でかつ経済的な効果を与えるのです。 言葉が悪いのですが、 普通の方法でやると、 多くの方が落ちこぼれるのですが、 この方法によって多くの方が救われます。 基本的な健康アップがはかられ、 そのうえで従来の歯磨きなどの方法を行うと余計効果が高まると認識をしております。
それで、 厚生労働省は、 平成13年1月から具志川村や沖縄県だけでなく、 全国の保健衛生担当部長、 担当課長が集まる説明会で、 フッ化物の利用に対して厚生労働省が、 住民合意が得られれば、 支援してまいりたいと申し上げております。 ただ、 その際、 水道の中のフッ化物濃度を調整するというのは大変大きな事業で、 個人的な問題ではすまないことから、 まず第1に私どもは支援する云々のその前に正しい情報を提供することが責務であろうと考えております。 正しい情報とは、 科学的に証明されたお墨付きの情報であることです。 WHOなどの専門機関・団体、 今日お見えになっているアメリカCDCの考え方、 見解などを包み隠さず皆様方にお伝えしなければいけないと思っています。
2番目としては、 具志川村の場合には、 沖縄県の行政区に属しているわけですが、 できれば、 その県の歯科医師会、 それと行政の支援を得たほうが絶対にいいわけでございます。 この部分について今日のシンポジウムは、 このことをクリアしたということで大変感謝し喜んでいる次第でございます。
3番目には情報提供をし、 また、 今日のようなシンポジウムの話を聴いたうえで、 住民の方々がここでお選びいただければいいのであり、 民主主義のルールにのっとってお選びいただければいい。 そういうことを informed choice インフォームド・チョイス (正しい説明を受けて理解した上での自主的な選・択・) によって、 具志川村が近い将来、 間もなくかも知れませんし、 若干の時間がいるかもしれませんが、 ぜひこういうことをやりたいということであれば、 厚生労働省として、 全面的に技術的支援をしてまいりたい。 当然のことながら私どもは沖縄県だけに関心を向けているわけではありません。 全国津々浦々どこでもそういう情報があった場合、 同じように対処していきたいと考えております。 ただ、 沖縄県の場合は、 いろんな事情が深まりまして、 最初にいいことをやろうとしていると理解をしておりますので、 よろしくお願いいたします。
私どもは正しい情報の判断には何も難しい判断をするということではないという解釈をしております。 具体的には、 今日の講師の方々からお話があると思います。 私なりに根拠を持っていることをお話します。 たとえば、 当地久米島は観光と久米仙というお酒で有名ですが、 水道にフッ化物を入れて予防するのはいいけれども味は変わっちゃ困る、 という疑問が出てきています。 これはまったく問題がないことがはっきりしています。 また、 この久米島のきれいな海が汚染されるという人がいらっしゃる。 私どもは厚生科学研究班に、 これは研究外の仕事ですが、 久米島の海のフッ化物濃度を測っていただいて、 1.32ppmという濃度を測定しております。 私どもは、 この話がある前に1.3ppmあるということを申し上げたので、 まったく違いはなかったのです。 海水の中に1.3ppmは入っているということは水道の中にフッ化物を入れるときは海水よりもやや少ない濃度でやるということなのです。 また、 こちらで食塩を取っていますが、 深層水を作る際にフッ化物も分けて取って、 一部水道に戻してやれば同じことができるのですが、 非効率・非経済です。 ですから、 そういう方法ではなくて、 人工的にやるという考え方もできるのであります。
いずれにしましても、その地域にあった踏み込んだ情報を提供しなければいけないということで、私ども厚生行政、歯科保健行政は不足があったと、大変反省しております。今後、一生懸命やりますので、ご理解いただければと思います。今日の話を真剣に受け止めて、皆様方への正しい情報、そして選択していただいた場合には支援することをお約束します。非常に充実した内容になっておりますので、今日の研修が皆様方の長寿社会のひとつの大きなきっかけとなることを願って祈念して挨拶に変えさせていただきます。