フッ化物応用への組織的対応

(社)沖縄県歯科医師会会長
喜屋武満

 私ども、 沖縄県歯科医師会として、 どのような組織的な対応を行ってきたかということについてお話ししてゆきたいと思います。


 沖縄県における地域歯科保健事業ということで、 我々が歩んできた道です。 先ほども挨拶でも申し上げたのですけれど、 昭和55年くらいからいろんな地域歯科保健対策というものを沖縄県庁と一緒になりましてやっております。 その間に、 歯科保健施策といたしまして、 このような沖縄県8020運動対策事業を実施してきています。












 歯科保健QOL事業推進協議会というものもつくりました。 そして平成10年から3年間いろいろそのQOL関連事業を行い、 それから、 沖縄県歯科保健計画の策定ということもやってます。 それでどういう風に沖縄県の歯科保健を改善・向上させていこうと精一杯させて頂き、 現在までまだ継続しているわけです。












 普及啓発ということでは、 歯科保健事業として、 「デンタルフェア」 ということを行っておりますけど、 これは歯の衛生週間で、 6月4日から1週間ですが、 沖縄県歯科医師会では 「デンタルフェア」 ということでやってます。 そして25回をむかえています。 その際に、 よい歯の子のコンクールだとか、 8020達成者とか、 8020はもう御存じだと思いますけれど、 80歳になった時に自分の歯でちゃんとものがかめるようにしましょうという様なことであります。 それから、 「歯っぴーファミリー劇場」 というのをやっております。 これは、 舞台の上で子供さん達にいろんな分かりやすい人形劇やコント等をやって、 歯科保健の啓発のための事業としてやってます。








 広報宣伝ということでありますけれど、 先ほどの 「歯っぴーファミリー劇場」 というものを年に1回、 2時間程かけてやっています。 それをRBCさんにお願いして、 1時間番組に改編してもらって、 9月の15日ごろにTVで放映しています。 毎年その視聴率は10%から14%くらいですので、 8〜14万人の方々に見ていただいています。 それから、 ラジオを活用した事業など、 その他の啓発活動もやっています。 もちろん、 ポスターやリーフレットの作成配布とか、 あるいは、 県や市町村の広報誌にも一生懸命させてもらっています。









 検診、 指導、 相談ということもやってまして、 母子保健の、 1.6歳児、 3歳児、 それから母親教室などです。 学校歯科保健では、 県下の小中校生、 高校生まで全部カバーしています。 そして、 その中でも歯の健康推進のために、 フッ化物洗口を行っています。 これは具志川村の小中学校であるとか、 大東島の小中学校で行っております。 それから、 障害者の歯科保健ですね。 私ども、 組織の中で、 センターがあり、 年に2回2ケ月間、 重度の障害者の方々を全身麻酔を行って歯科治療を行ったりしています。 全般的に、 母子保健から老人保健まで、 多くの世代にわたるような歯科保健の啓蒙活動や努力を行っております。 これまで我々が一生懸命沖縄県民の為にあるいは、 その歯科保健の啓発のためにやってきたということを、 ぜひ、 今、 皆さん方に頭の中に入れておいていただきたいと思います。






 具志川村の話に移ります。 平成9年のデータですが、 具志川村は人口4500人ほど、 水道水の普及率は99.9%になっております。 平成6年度で、 一人当りの村民所得は県内で34位。 だからそう高いようなところでないというところです。 それから、 年間の入域者が15万人いますということですね。 これが大体具志川村の概要であります。












 この具志川村におきまして、 昭和50年に乳幼児の歯の検診をやったそうです。 昭和50年ですので、 今から25年前です。 そうしたら、 どの子も虫歯と歯垢があって、 口臭のある子が多かったというような記録が残っています。 全県的にも昭和50年頃は虫歯が多かったのですけれど、 歯垢と口臭はそんなになかったのです。 しかし、 昭和57年に具志川歯科医院が開院を致しまして、 そして平成2年から、 当時の小学校の養護教諭の先生と保健婦の先生と、 開業医の先生が、 フッ化物歯面塗布を子供達の口の中をよくしようという風なことで始めました。









毎月歯科教室を開催して、 歯の健康教室を開催いたしまして、 子供達の口の中をよくしようということで地域ぐるみの運動が始まったわけです。


それが、 始まることによって口腔保健の管理体制が実施されたということなのであります。












 具志川村では、 平成3年から、 保育園児と学童 (幼稚園〜中学生) を対象にフッ素洗口が導入されました。 ここで、 どのようなむし歯の指数の変化があったかを見てみましょう。

 全国の12歳児DMFTの数値です。 この平成4年度の時点で全国の数字が4.2です。 そして平成12年の全国の平均値は2.6です。 先ほどお話しましたように、 WHOでは平成11年度までにDMFTの値が3をきるという目標をたてました。 全国では2.9になりました。 今度は沖縄県のデータですが、 平成4年のDMFTは6.3というような高い数値を示しています。 全国的に高い数値なのです。






先ほどもお話しましたように、 県庁と歯科医師会と歯科医師も一生懸命、 県民の口腔衛生の向上のためにやってきました。 でもですね、 全国平均を下回り、 沖縄県の子どもたちのむし歯の状況は変わらなかったのですね。 そして、 平成12年のですね沖縄県4.3となりました。









 平成3年度からフッ素洗口を始めた具志川村の子供たちのむし歯の状況は改善してゆきます。 フッ素洗口を平成3年から始めまして、 平成4年には7.6ありました。 それが年々目に見えて右肩下がりになっていくんです。 平成12年2.0です。 平成11年は1.9です。 全国平均値をかるくクリアしているんですね。 私達は昭和50年以前から県民のための口腔衛生の向上活動だとか、 啓蒙活動とか啓発運動とか一生懸命やってきたんですね。 それにはですね多額の資金、 多額の金額を費やしてきたんです。 一方、 具志川村の子どもたちは平成3年からのフッ化物洗口の導入によって、 DMFTがどんどんどんどん下がってきているのですよ。


このスライドは久米島の高校生のDMFTです。 平成3年にフッ素洗口が始まったので、 10年たってるわけですね。 つまり、 10年前にはこの高校生達はまだまだ小さかったんですけれど、 ま、 5歳でしょうかね、 で、 それがフッ化物洗口を継続したんですね、 そして、 平成13年4.1なんです。 日本全国の平成11年の値ですけれど、 7.1なんです。 この倍近い数字の段差をどう考察すべきかということは僕らの責務ではないかなと考えるわけであります。

 







平成12年に具志川村の開業の先生あるいは、 地域の小学校の先生、 保健婦の先生皆さんが、 一生懸命になって、 子供達の口の中をよくした、 でも、 子ども以外の方々にはまだまだそこまでいっていないなという話があります。 そして、 その人達をいかにしてよくしていくか、 それは全体が、 あるいは、 全島的に、 フッ素の安全で有効な使い方をしながら普及させていかなければならない、 ということで、 このような水道水のフッ素化を要望しています。 これが、 村議会であるし、 村長さんに、 それらを話しています。 そして、 先ほども話しましたように、 全ての子供達に虫歯がなくなるように。 そして、 全ての村民、 子供達だけでなく、 先ほどのトーマス・リーブスさんのお話にもありましたし、 子供達だけが相手のフッ素ではありません。 全住民、 全世代のためのフッ化物なのであります。 それをやりたい。 それからもう一つ。 高齢者になっても自分の歯でしっかりかめて健康である。 つまり、 自分の歯がある、 それが8020につながっていくのですね。 それで8020の意義がしっかりと確立されるのであります。 それをするためには久米島から始めましょう、 具志川村から始めましょう。 それで、 フッ化物は絶対ですよ、 いうふうなことです。 これは水道水フッ化物濃度適正化運動の一つ、 それで、 私ども歯科医師会は平成12年の7月、 第7回定時理事会で話し合い、 審議の結果、 支持の決議を致しました。





 我々は口腔衛生の推進ということでこのようなことを考えています。 健康上の公平、 平等を確保するということは、 やっぱり、 一番大事なことであります。 それから、 全ての世代を対象に致します。 子供達だけではない、 全ての世代、 男女問わず、 全ての世代の方々に対して口腔衛生を推進しないといけない。 そして、 もう一つは、 障害者や、 高齢者の方々が、 障害者になったり、 高齢者になるとですね、 機械的なブラッシングが非常に困難になるわけですね。 特に、 我々歯科医師会では全身麻酔で障害者の方々の治療やってますけれども、 この方々は治療が終わっても後の口腔内の衛生維持が難しいわけですね。 こういった、 機械的なブラッシングがなかなか手が動かないとかがありますから、 とても難しい。 また、 高齢者の方も一緒なんです。 高齢者の方で寝たきりになってしまうとなかなか手が動かないとかですね、 口の中の掃除ができないとかなりますから、 その時に、 やっぱり困ったことになるわけですね。 それで、 機械的な口腔衛生ができない、 しかもこの方々は、 歯科疾患に罹患しやすいですね。 さらに、 健全な方々に比べて、 その後の処置がとても難しいんですね。 我々県民、 国民、 誰でも、 障害者になる、 高齢者になるということは可能性は強く持っていますから、 そういうふうになる前に、 フッ化物で、 フロリデーションで、 口腔内をきれいにしてあげる、 障害者の方でも大丈夫である、 というようなことを是非やっていきたいのです。

 健康日本21というのがありまして、 これの基本的な理念は国民の健康の増進であります。 がん、 循環器障害と糖尿病などの生活習慣病と共に、 健康日本21の目標達成に向けて努力をしています。 その中に、 歯の健康も入っているんです。 つまり、 歯の健康はですね、 生活習慣病であるということが、 そこで位置付けられているので、 8020運動と健康日本21というのをこれから一緒にやっていかないといけないということを我々は考えているわけであります。









 我々歯科医師会としては、 歯科医師の責務ということでこのようなことを考えています。 歯科医療を通して国民の健康の保持、 増進に寄与することであり、 学術的考察を確立しながら、 歯科医療を提供していくことである。 つまり、 エビデンスベースドメディスンという言葉があります。 学術的な考察がないと、 こういった歯科医療を提供できないんだといったことがあります。 そして、 もう一つが、 地域住民の健康の確立のために行政と歯科医師会が主体的に公衆衛生事業を推進すべきである、 といったことがあります。








 まとめになりますけれども、 歯科疾患の撲滅は歯科医師と行政の責任であると。 全ての世代、 全ての県民のための地域歯科保健を我々はやらなければいけない。 そして、 治療よりも予防。 今までの我々の歯科疾患の治療というのは、 病気になった人を治していく、 それを治していくということに随分大きな時間とエネルギーを費やしてきました。 しかし、 これからは、 治療ではなくて、 その前の予防を考えなければならない、 この予防を考えながらこれからの歯科疾患の撲滅、 あるいは口腔衛生の向上を考えていかなければならないというふうに思います。 そして、 それをするためには一番有効な方法として、 地域におけるフッ化物応用を行っていったほうがよいのではないかと考えていますし、 そのことが先ほどもお話したのですけれども、 8020への挑戦ということにもつながっていくのであります。 今、 8020運動をやっていますけれども、 平成元年から始まってていますけれども、 自分の歯を80歳まで20本残そうということなんですけれども、 数値目標がないんですね、 数値目標がたてられないです。 人によっては、 8020というのは、 802080であるといつだったか境先生から聴いたことがありまして、 境先生も笑いをとっておられましたが、 いまからフロリデーションを始めて、 80年たったら8020が達成できるんじゃないかとを話しておられました。 全くそうじゃないかと思うんです。 これから、 フロリデーションをすることによって、 8020を達成する目標が可能になってくる。 そこで8020への挑戦が始まる。 そして、 8020を達成した時は、 沖縄県は長寿で有名なんですけれども、 その健康長寿をもっと活性化した、 いきいきとした長寿を迎えることができます。 少なくとも寝たきりにはしない。 歯があれば噛むことができます。 噛むことが脳を活性化するといいますから、 この8020が健康寿命の延伸につながるということでございます。

 最後になりますけれども、 沖縄の海と空を映し出したいと思います。 これからも私達の郷土、 私達の郷土を愛する気持ちは一緒でございますし、 いつまでもきれいなところであって欲しいものです。 そして、 我々の口の中もきれいな歯をいつまでも残したいなと思います。 決して環境を汚すようなことはしません。 本日の私の話を終わらせて頂きます。 どうもありがとうございました。