カナダのフロリデーション

 カナダのケベック州に移住する知人のことで、歯科医のN先生より問い合わせがありました。向こうの状況を知って、むし歯予防についてアドバイスをしたいということです。そういえば、アメリカやオーストラリアなどは詳しく州単位で、情報を持っていますが、カナダはわかりません。日F会議事務局の田浦先生から、CDCのトム・リーブスさんに尋ねてもらいました。トムさんの紹介で、カナダのLevy先生より、田浦先生に様子を教えて頂くメールをいただきました。(山本武夫)

Dr. Levyの私信によるとケベック州が極端に少ないことがわかります。フランス語圏であることが背景にあるかもしれません。次の話題が物語っています。
この原因を知るにはは、ケベック州の社会的、文化的背景も調べる必要があります。北米唯一のフランス文化圏だから???(田浦)

   ケベック州政府,ポケモン/マリオの「仏語版出さないなら訴える」

 カナダのケベック州政府は9日,任天堂とソニーが人気ゲーム製品のフランス語版を大晦日までに出さない場合,両社を訴えると脅しをかけた。ケベックの文化・交流・フランス語憲章担当大臣,Louise Beaudoin氏は会見で,これら日本企業のカナダ法人関係者と1年半前から話をしているが,フランス語を唯一の公用語とするケベックにおいて,両社はフランス語での製品を提供しないつもりのようだと語った。それら製品には超人気ゲーム「Pikachu」と「Super Mario」,Hasbroの一部門がカナダで提供しているポケモンカードなどが含まれる。

カナダのフロリデーション( by Dr. Michael Levy 、2003年12月私信 )(田浦先生作成カナダ・フロリデーションpptファイル:622KB)

 現在カナダでは、給水人口の38%(約1千万人)が水道水処理施設から給水でフロリデーションの利益を受けており、また、約27万人が天然の至適フッ化物濃度の水で生活しています。
 カナダのフロリデーションは1963年に首都圏(トロント、エトビコーク、ノースヨーク、スカーボー、ヨークとイーストヨーク)から始まりました。
 カナダのフッ化物濃度の調整については、州や都市によって異なります。カルガリ市は0.7ppmFですが、カルガリ以外のアルバータ州の地域では0.8 ppmFとなっています。ケベック州では、法的には有効ではないのですが、近年1.2ppmFから 0.7ppmFに濃度を下げました。
 州単位のフロリデーションの状況ですが、ケベック州では約8%に過ぎませんが、オンタリオ州では74%であり、アメリカ合衆国の70%に近似しています。アルバータ州では給水人口の78%が水道水フロリデーションの給水を受けており、以下、マニトバ州では85%、サ  スカチュアン州では41%であり、プリンスエドワードアイランドでは25%の数字です。
 モントリオールは人口100万を超える北米で最北の大都市ですが、ここではフロリデーションされていません。ここ数十年間にわたり、モントリオールの政治的気風のためにフロリデーションに敵愾心を抱かせてきました。最近では、私たちは新たな攻撃に出くわしています。ラベル(人口25万人)のようないくつかの小都市でフロリデーションが中止となりました。ラベルの中止理由は理解し難いものでした。さらに、機器が旧式化したり、また交換の必要がある地域もあります。とにかく、フロリデーションに対する政府の無関心こそがこのような事態を生んだ要因の一つとなっています。
 ケベック州では、1970年代の末にフロリデーション令が出されました。ところが、その法律はまったく適用されずに、1980年代半ばには一時的に法律の停止令が出されました。最近通過した新しい法律では、命令していませんがフロリデーションをすすめています。子の法律がフロリデーションの推進の一翼を担っています。
 それで、最近になり、ケベック州の単位でフロリデーションへの関心が増してきました。3つの都市では独自にフロリデーションについて考えています。
 また、地域によっては機器の更新を必要としています。これまでは慣例的にフロリデーション関連装置の費用については各々の自治体ではなく、州政府が支出してきました。
 前述のように、ケベックのフロリデーションの割合は低く、北米の他の州に比べて困難を極めている訳は、私見ですが、ケベック州の抱えている社会的ならびに文化的な要因によるものと思います。

(私信:原文)FLUORIDATION IN THE OTHER CANADIAN PROVINCES
      Today in Canada, 38% of Canadians (approximately 10 million people) enjoy the benefits of water fluoridation from water treatment plants,while approximately 270,000 people drink water which is naturally fluoridated at beneficial levels.
  In Ontario, 74% of the people who live in a community with a water treatment plant enjoy the benefits of fluoridation.
  The water consumed in the Toronto Metropolitan Area (Toronto, Etobicoke, North York, Scarborough, York, and East York) has been fluoridated since 1963.
In Alberta, 78% of the population has access to fluoridated water. In Manitoba, it is 85% and in Saskatchewan 41%.  In Prince Edward Island, it is 25%.
Montreal is not fluoridated, the political climate has been very hostile to fluoridation for decades.  Montreal is the last North American city over  1,000,000 which does not fluoridate its water.  Presently, we are trying a new offensive.  Several smaller cities such as Laval (population 250000) have stopped fluoridating.  In the case of Laval the reasons are hard to understand,  but in others communities the equipment was old and needed
replacement. A lack of government interest was one of the factors that led to this situation.
Recently, there is increased interest to fluoridate at the provincial level in Quebec.   At least three small cities are considering flluoridation which is quite a turnabout in itself.  Also, old equipment is being replaced by state of the art equipment in several other communities. The cost of the equipement and installation has traditionally been absorbed by the provincial government , not by the municipalities.
 In my opinion, there are social and cultural factors in Quebec which make implementing water fluoridation more difficult than in other parts of North
America.
by Dr.Michael Levy