平成23年度富山県高校総体(射水市大門総合体育館)
 2011年6月4−5日

 今年の高校総体は、2日間に渡って大変熱戦が続いた。東日本大震災の影響で、選抜大会が中止され、1年ぶりの全国大会につながる公式戦とあって、各校の練習の成果が、秋季大会・選抜予選・春季大会通りに出せるか、試された。特に男子は、大会ごとに団体の覇者が変わっていただけに、本番はどこが制するか見ものであった。昔は、ずば抜けたチームがいない時は、春を制すると県総体は勝てないというジンクスもあったそうだ。
 まず、初日は、男子個人戦の序盤で、春の大会の優勝・準優勝の第1シード末上選手(龍谷富山)が3回戦で、奥村選手(富山第一)に面で敗れ、第2シード岡野選手(富山工業)は同じく3回戦で、東選手(高岡工芸)に延長小手で敗れる波乱があり、会場の雰囲気が一変した。Aコートでは、末上選手、冨居選手(入善)を破った勢いのある奥村選手が、村井選手(高岡工芸)・柴田選手(福野・井波)を破って勝ちあがった五十嵐選手(富山工業)と奇しくも婦中少年スポ少時代からの盟友対決を制し、決勝リーグ進出。Bコートでは、第3シードの木倉選手(高岡工芸)が、寺部選手(龍谷富山)・中島選手(砺波工業)を破り順当に駒を進め、来年に向けて力をつけてきている篠原選手(福野・井波)を破って勝ちあがった田中選手に面・小手2本勝ちで 、選抜に出場できない悔しさを晴らすかのように、このコートは波乱なく決勝リーグへ進出。Cコートは、第3シードの矢野選手が、浅井選手(富山)・じわっと地力を発揮してきた松田選手(富山東)を破り駒を進め、秋季3位の高見選手(富山中部)を破って勝ちあがった田代選手(高岡工芸)に面1本勝ちし、このコートは波乱少なく、決勝リーグに進出。Dコートでは、大河選手(富山第一)が、久し振りに実力を発揮、吉田選手(龍谷富山)を面で破り駒を進め、本命であった岡野選手・勝ちあがった冨田選手(大門)を破った東選手(高岡工芸)に、小手1本勝ちし、決勝リーグに進出。決勝リーグでは、シードの木倉選手は初戦で奥村選手に2本勝ち、矢野選手は大河選手に小手を先取されるも、面2本を返し逆転。2試合目は木倉選手・矢野選手ともに順当に、奥村選手・大河選手に1本勝ち、2試合消化した時点で、個人戦2位以上を確定した。3試合目が事実上の決勝戦となり、木倉選手が面を先行するも、矢野選手が小手を返し、最後は木倉選手の面が決まって、優勝を獲得。木倉選手は秋季・選抜予選と個人戦を制した実力を、春季で譲ったものの、本番で取り返した。3位には、婦中スポ少同級生対決を制した大河選手。
 初日の、女子団体戦は、予選トーナメントから順当な勝ちあがりで、シード校が全て決勝リーグに進出した。Aリーグは、富山中部を破って勝ち進んだ福野・井波を富山北部が4−0で破った。Bリーグは、富山東を接戦で破った入善を、高岡工芸が、粘る入善に大将戦まで持ち込まれ、石井選手がかろうじて高田選手と引き分け、本数勝(4−2)。Cコートは、滑川を4−1で破った砺波を、高岡が3−1で破った。Dコートは魚津に3−0で勝った高岡南を呉羽が4−0で圧倒した。決勝リーグは、富山北部が、危なげなく3勝し、5連覇を飾った。粘る高岡も、2試合目の富山北部戦で、先鋒豊田選手が、山田選手と引き分け、次鋒山本選手に滝脇選手が1本とられ、近藤選手が1本返したところまでは善戦するも、副将久木田選手・藤村選手の壁は厚く、ともに2本負けし、勝負は決した。2位は、高岡、3位は呉羽、4位は高岡工芸となった。(余談・・・この女子団体戦で、隠れた話題があった、富山全中出場の佐々木南歩選手(高岡南)が中堅として登場。春季大会では、川島選手(高朋)が話題になった。佐々木選手の剣道再開に陰ながら、エールを送りたい。決して高校剣道だけがすべてではない。生涯スポーツとして、武道として剣道をとらえるとき、彼女がこれからどこかで、また選手としてあるいは指導者としてあるいは保護者として、剣道に携わっているかもしれないという夢を小生はひそかに持っている。)
 2日目は、女子個人戦で、注目は富山北部の4選手に、どう食い込むかであった。Aコートは、第1シードの藤村選手が、尾谷選手(魚津)・佐藤選手(高岡工芸)を退け駒を進め、春季ベスト8の雨野選手(福野・井波)を破った高野選手(富山中部)を延長面1本で破った米田選手(新指導者注目の寺島先生のいる高岡南)・横山選手(滑川)を退け駒を進めた竹内選手(高岡)と対戦、春季大会団体戦で不覚をとったことを生かし慎重に試合を運び、延長で面を決め順当に決勝リーグに進出。Bコートは、ノーシードながら中学1年の時に県新人を制したこともある山田選手(富山北部)がようやく実力を個人戦でも発揮して高橋選手(富山)・春季ベスト8の松山選手(砺波)を破った近藤選手(高岡)を退け無難に駒を進め、宮腰選手(高岡工芸)や春季3位の第3シード川島選手(高朋)を破って勢いのある中山選手(福野・井波)と対戦、胴2本を鮮やかに決め決勝リーグに進出。Cコートは、第3シード豊田選手(高岡)が竹内選手(呉羽)や秋季の覇者の石井選手(高岡工芸)を退け駒を進め、高木選手(砺波)や秋季2位のこのコート裏本命の久木田選手(富山北部)を延長小手で破って大歓声を浴びた高田選手(入善)と対戦、面小手2本勝ちし、決勝リーグに進出。Dコートは、第2シードの山本選手(富山北部)が、小西選手(富山東)・安川選手(呉羽)を無難に退け駒を進め、長谷川選手(富山中部)や山田選手(福野・井波)を延長で破って勝ち進んだ秋元選手(入善)と対戦、面1本を決め決勝リーグ進出。決勝リーグは、富山北部3人に、豊田選手がどう食い込むかが焦点となった。第1試合は、藤村選手が、山田選手に面1本勝ち。山本選手は、豊田選手に面2本勝ち。2試合目は、藤村選手が、豊田選手に面1本勝ち。山本選手は井波スポ少以来の同僚山田選手にお互い攻め合うも決め切れず、延長も終盤、引き分けかという時間帯に、相面がわずかに早かったか、白山本選手に旗が上がった。結局男子同様、この時点で、藤村選手、山本選手が3大会連続1位・2位を決めた。3試合目は、先輩藤村選手に胴1本先行し、俄然有利かと思われた山本選手は、その後も攻め続けたが、さすがに中盤面を返され、更に終盤に面を決められ、今回も2位に終わった。3位は、延長の末、山田選手が豊田選手に小手1本勝ちし、富山北部勢が、1位から3位までを占めた。
 男子団体は、当事者校の保護者にとっては、大変はらはらどきどきものだが、観戦者にとっては大変興味深い戦いとなった。前回シードから外れた、高岡工芸や高朋、福野・井波がどの山に入るかで、シード校は苦しくなる。秋季の覇者は龍谷富山、選抜予選は高岡工芸、春季は富山工業と来ていただけに、春からの強化がどこまで実ったか、興味があった。Aコートは、まさに激戦区。富山工業は2回戦を全く危なげなく駒を進め、高岡工芸は2回戦で福野・井波と対戦、先鋒篠原選手の1本勝ちを、次鋒埴山選手が村井選手と分け、中堅洲崎選手が田代選手と分け、副将につないだ福野・井波は、斎藤選手が東選手に2本負けし、これで俄然高岡工芸が有利と思われたが、大将戦で、団体戦1本に賭けてきた島田選手が、個人戦1位の木倉選手に攻め手を緩めず何度も旗が上がりかけ、中盤から終盤にかけて飛び込んだ面が見事決まり1本先行。その後、終盤に焦る木倉選手が攻めあぐんだその瞬間、またしても面が決まり、ついに選抜出場権を獲得しながら、大会中止に泣かされた高岡工芸団体戦敗退のシーンだった。コート決勝は、福野・井波が勢いに乗り、先鋒篠原選手が千葉選手に面1本を決め、次鋒埴山選手も村松選手に胴1本を先行されるも面を返し分け、中堅洲崎選手は五十嵐選手に面を先行されるも逆に面を返し父兄席から大歓声、しかし終盤また面を決められこの時点で全くの互角、副将戦は斎藤選手が中野選手に粘って終盤面を決めて福野・井波が一歩リード。大将戦は、富山工業の実績ある岡野選手に対し、前の試合で木倉選手を破って勢いに乗る島田選手、序盤は一進一退だが、岡野選手がよく見て小手を先行しこの時点でタイに、あとは終盤まで、一本取った方が勝ちということもあり攻め合いの中、岡野選手がはなった面が決まって、息詰まる熱戦に終止符をうった。富山工業は決勝リーグへ進出。
 Bコートは、2回戦で魚津に快勝の高岡が富山第一と大接戦、先鋒戦で関本選手を破った黒田選手の勢いを、次鋒引き分け、中堅奥村選手の2本勝ちにもめげず、副将戦で境選手が高井選手に勝ってリードで大将戦を迎え、遠藤選手が引き分けでも勝てると粘るも、大河選手が面を決めてかろうじて、富山第一が本数勝ちした。コート決勝は、富山第一が、富山中部を圧倒して決勝リーグに進出。
 Cコートは、結果的には競った2回戦の入善戦だが、富山東の無難な勝ちあがりが目立った。先鋒大浜選手、次鋒多田弟選手、中堅足立選手で試合をきめ、副将戦を待たずに2試合とも勝ち、決勝リーグに進出。
 Dコートは、この大会に挑む高朋の仕上がりの良さが目立った。富山に3−2で勝ちコート決勝に進み、大門を寄せ付けず4−0で勝ち進んだシード校の龍谷富山との対戦は、先鋒大谷選手が個人戦2位の矢野選手に面小手の2本勝ちし波乱が幕開け、勢いに乗って次鋒若野選手も面を先取、しかしここで龍谷富山青山選手が面2本返した。中堅は桑原選手が吉田選手に面小手の2本勝ちし、空気が一転した。副将高倉選手と細川選手が必死のせめぎ合い、引き分けでもいい高朋は時間を有効に使い逃げ切り、この時点で龍谷富山の無念の敗退が決まり、高朋は決勝リーグに進出。
 決勝リーグは、1試合目で、富山工業は富山第一に5−0と圧勝、一方富山東は、次鋒多田弟選手、副将松田選手が活躍、大将戦につなぎ、多田兄選手が竹内選手を面2本勝ちし、高朋に勝利した。2試合目は、富山工業は、富山東に有利に勝負を進め、3−1と快勝、この時点で2勝と断然有利になった。もう一方の富山第一と高朋戦は、高朋が先鋒・中堅と勝ち、富山第一が次鋒・副将と勝ち、勝負は大将戦にかかったが、大河選手(富山第一)が2本勝ちし勝負を決めた。3試合目は、富山工業が、高朋に横綱相撲で快勝し、3戦全勝で、インターハイ出場を決めた。富山第一も、富山東を4−1と圧倒、2位となった。
 今大会を振り返って、やはり昨年の新チーム結成以来、秋季・選抜予選・春季と大会を重ね、努力を積み重ねた学校が栄光を勝ち取るのだと感じました。1年生は最初の大会では、なかなか3年生に歯が立たないものが、秋季にはそれなりに強くなり2年生を脅かす存在になり、また選抜予選になると、3年生が意地を見せつけ、2年生何するものぞという気迫を前面に戦い、結果を出す。春季は、新1年生を加入して、急に総合力をアップさせる学校が出る。そうかといえば、県総体では、やはり1年間の総決算で、実力校が栄冠を勝ち取るということをまざまざと見せられました。富山工業・富山北部には、総体で予選突破を期待します。県内では無敵でも、県外へ行くと歯が立たない富山県勢、それでも遠征などを積み重ね、自信をつけ臨んでほしい。悔しい思いをした県内の各校の代表であることを思い出して頑張ってほしいものである。(山本武夫)




*井波剣道スポ少OB・OGの成績
 第1日 男子個人 篠原天馬(南砺福野・井波)、松田尚之(富山東) 4回戦進出(ベスト16)
      女子団体 
富山北部(山田千菜都・山本麻紗子) 優勝:5連覇・・・青森総体・北信越総体出場へ 
             南砺福野・井波(山田晴子) ベスト8
 第2日 女子個人 
山本麻紗子(富山北部) 次勝:青森総体・北信越総体出場へ
             
山田千菜都(富山北部) 3位・・・北信越総体出場へ
             山田晴子(南砺福野・井波) 3回戦進出(ベスト16)
      男子団体 
富山東(松田尚之) 3位・・・北信越総体出場へ
             南砺福野・井波(篠原天馬・洲崎貴史・斎藤哲) ベスト8
             龍谷富山(青山虹) ベスト8

*大会成績・・・表彰式

全体成績
団体
男子 優勝:富山工業(初優勝)、2位 富山第一、3位 富山東、4位 高朋、ベスト8:福野・井波、富山中部、桜井、龍谷富山
女子 優勝:富山北部(5連覇)、2位 高岡、3位 呉羽、4位 高岡工芸、ベスト8 福野・井波、入善、砺波、高岡南

個人
男子 優勝:木倉(高岡工芸)、2位:矢野(龍谷富山)、3位:大河(富山第一)、4位:奥村(富山第一)
    ベスト8:五十嵐(富山工)、田中(富山南)、田代(高岡工芸)、東(高岡工芸)
女子 優勝:藤村(富山北部)、2位:山本(富山北部)、3位:山田(富山北部)、4位:豊田(高岡)
    ベスト8:竹内(高岡)、中山(福野・井波)、高田(入善)、秋元(入善)