谷のどんど焼き(富山県南砺市谷の左義長)

平成23年の記録・・・・平成23年1月9日(日)午後1時から設置、午後3時点火

 古くから、谷部落(町内)で、厄払いや無病息災を祈って、竹やわらなどを持ちより、燃やして左義長をしていました。
 この地域では、昔は左義長とは言わず、『としとき』や『どんどやき』と言っていました。
 お正月のしめ飾りや古い神棚のお札をその時に燃やし、子どもたちの書き初めの紙は、左義長の火に焼かれ、勢いよく上がると上手に書いたとか、よく勉強が出来るとほめられたものでした。
 また、この竹がよく燃えた後の、『おき』(よく焼けて真っ赤な状態の時)を頼りに、それぞれの家から持ってきた餅をあぶって、食べました。特に、竹の黒い灰がついたのを食べると、元気でその年は風邪をひかず健康だと言われました。この『どんどやき』に家にいて来れない家族のために、半分ほどしか焼かずに、竹の灰を付けて、帰って食べさせてもいいといことで、『灰ころがし』した餅を持って帰ることもしました。また、焼け焦げた竹のまだしっかりした部分を細く削って、箸にして食べるとその年健康だとも、昔の人は言っておられました。(現代の素人健康法に、竹炭があります。消臭効果は抜群で、酸を中和する働きなどもあり、こういったものが古くから、このどんどやきの竹の灰ころがしに由来するのかもしれません)
 小さいころ、年寄りの人たちは、子供に「よく、火にあたっていこ。小便たれんようになるぞ。」とも、言っておられ、心当たりのある子供はわざと火の近くに行ったりしたものでした。(小生もその一人:昔のように暖房の少ない時代は、このような大きな火は貴重な暖房の一種だったでしょう。どんどやきから、家に帰っても手足は冷たくても、顔が真っ赤で、いつまでもほてっていました。)
 この地域では、各部落ごとに、行うため、古くから、「あの在所、もう火をつけたぞ。おらちゃもそろそろつけるか。」と、遠目に夜も更けかけたころ、あちこちに見えてくる左義長の灯りが気になったものでした。 休日法がかわり、「成人の日」が1月15日でなくなってから、このどんどやきの日が定まらなくなってきました。昔は、必ずこの行事は、1月14日の夜と決まっていました。なぜなら、翌日が祝日だからで、少しぐらい遅く火をつけても、翌日は休みですから・・・
 そして、この14日というのは、昔から大雪が降るのが多く、翌日の成人の日が快晴ということが多かったような気がします。
 組み立てるのは、昔から、児童クラブ(児童会)の父兄が中心でしたが、子供たちの減少で、青年会が必然的に加わり、そのうち町内会の行事として行われるようになってきました。近くに戸板団地があり、何年か前から、一緒に行事を行うようになって来ています。
 昔の多雪時代(積雪1m50前後)には、雪の中に立てるだけでも竹が倒れないようなこともありましたが、最近の温暖化で、雪のない年のどんどやきもありました。
そういう年には、よく消防車の見回りが回って行き、風向きも、人家に灰が行かないか、気になりました。やはり、どんどやきは雪が無いといけませんね。むかしは、翌日その灰がどこまで飛んだか、気にしたものでした。
 谷のどんどやきも、昔から、組み立てる場所が、いくつかあって、その年によって変わったことがありました。しかし、1度やった場所は、10何年続くことが多かったです。小生のやがて60年の記憶では、谷の宮様の下の畑というのが一番古く、それから、中島【谷は、古くから3つの班があった。ひがしだん(東谷の略?)、なかじま(中島?)、にしだん(西谷?)】の山本家の東側の田んぼ、それから、東谷の武田本家の東よりの田んぼ、続いて、西谷の前田家の東よりの田んぼ【ここは、院瀬見往来を挟んで、下手の時と上手の時があった】、それから、ここ近年は、東谷の武田本家のずっと東よりの田んぼです。

 今年は、谷の在所に生まれて、久しぶりにこのどんどやきの最初から最後まで、参加できたので、一度この行事を記録したくて、写真もたくさん撮りました。昔はどの家にも、竹藪があり、少しづつ竹を集めて、その場所まで運んだものでした。今は、谷の部落にも、竹藪がある家が、亀田家とお寺(浄教寺)と我が家(実際には我が家に近接する、武田家・前田家にも延びた竹が出ます)しかなく、そこから集めるので、年によってはあまり集まらず小さなどんどやきになったこともありました。今年は、我が家も、クマ出没したりするので、藪を整理するつもりで、たくさん切って出しました。そしたら、亀田家や浄教寺からも多めに集まったようで、大きなかたまりになりました。
 今年は、天候的は恵まれず最悪のコンディションでした。前日は快晴、このページを作成している翌日の今日(10日)も天気は良く、1日ずれて欲しかったです。昨日は、夜中からの雨がずっと日中も降り続き、切り出した竹はびしょびしょ。火種になる藁なども、組み立てていくうちに段々湿って行きました。午後1時から組み立て始め、2時半前に完成し、3時には点火しましたが、これ以上遅くなると、もっと悲惨でした。燃えだした3時ころには、雪に変わりましたが、時すでに遅し・・・
 このどんどやきは、竹が雪ならあんまり湿らずに良く竹の油で燃えやすいのですが、雨の場合は、燃えにくくなってしまいます。そして、今は農業も機械化が進み、藁が少ない時代になり、転作している豆も、昔は豆殻がたくさんありましたが、機械で刈り取る様になってなくなり、火種にならなくなったのも、残念です。
 今年は最悪の条件のため、少し非常事態で、古い灯油をかけざるを得ませんでした。

 スナップ写真をたくさん撮って、この『としとき:どんどやき』の行事を後の世代にも伝えたいと思います。(山本武夫)


午後2時半、無事組み立て終えて、谷と近くの戸板団地の世話方一同。(1軒に1人づつ参加していますが、小生より上の人は数えるしかいなくなりました。)


 谷の在所に、これだけしか、児童クラブの子どもがいません。もう少し経つとまた増えてくる気配はしますが・・・(おい、あっち向いてるのは、だれや:小生、名前分からず)
今度は、大丈夫?


小生が、午前中に切った竹を運んでもらいます。

大小30本近く、供出しました。

軽トラックに積みます。

昔は、みんなかついで運びました。

隣の部落、連代寺の組み立ては、一足先に終了。

予定の田んぼに竹を集めます。

四方に、竹を配ります。

基礎の竹の打ち込みです。(カケヤで…)

4本の支柱を立てます。

竹に藁を付けます。(今年は雨で、効果少なし)

4本の支柱を×印の横にした竹で固定します。

竹を立てていきます。

背の高い竹に、先端近くに縄を縛っておきます。

2本つけた縄を支える人と、倒れないように持つ人と…

どんどん次々に竹を立てていきます。

縄を持った人が、竹の先の方を閉めながら、回ります。

新しく竹を立てて回ると、縄の位置が下がるので、別の
人が竹竿で、縄の位置を持ちあげます。

その間に、小さな竹や、長すぎて切った先を、中に押し
込みます。

風邪などや竹の力で、中心がずれた時、梯子で押します。

いよいよ、形が整ってきました。

残っている竹を周りに立てます。

このころには、雨で充分、重い藁付きの竹になっています

最後の竹を立て、周りを縄でぐるぐる締めます。

中に火種となるよう、藁とか筵を入れます。

周囲に、偏った時の杭を打って、縄を止めます。
今年は、あまり風もなく、杭はほとんど必要なし。

長い間、立てておくときはビニールシートをかけます。
今回は、すぐ点火するので、菰だけで放置します。
  
 お疲れさまでした。小生は、組み立てには、役に立たないので、カメラマン専用でした。(スミマセン)

午後1時から、約1時間半掛かりました。
 

午後3時、いよいよ点火です。

湿っているので、なかなか燃え上がりません。

おーい、子供たち集まれー!

竹竿につけた、書き初めを燃やします。高く上がれー!

はじめはくすぶるだけでした。

そのうちに、中の割と乾いた藁などが一気に燃えだしました。

しばらくは、勢いよく燃え、真ん中に火が上がりました。

このまま、燃え上がってくれと・・・風向きで北西側のみ。

中の藁が燃えつきると、火が下火に・・・

風下側は少し燃えています。

少し、濡れていたものが乾いて、また火が強く…

しかし、上の竹が燃える兆しは、見られず。

仕方なく、竹を倒して、燃える風下側へ、短く切って突っ込みます。

これからは、また、鋸と鉈(なた)が威力を発揮…

ひとしきり、乾いた竹が燃え尽きるとまた、下火に…

とうとう、非常手段で・・・古い灯油の参上!

消えていたところに勢いが復活。

何とか、つないで・・・

やぐらを組むように、短く切った竹を集めます。

中心部の火力は、一定してきました。

先が燃えて、周りの部分を中に寄せていきます。

段々、燃える範囲が狭まってきました。

「おーい、お神酒、竹で燗するから、せせるなー!」

寒いし、お神酒も竹のエキスと混じると絶品!(経験者)

風上では、これから準備が・・・

昔は、みなこうして餅を焼きました。(半分の竹に乗せ…)

今は、子どもが炭だらけは嫌がるからと、餅焼網の登場。

もう、竹はほとんど少なくなってきました。

あちこちで、餅焼が・・・

だいぶ、近づけるようになってきました。

遠隔操作できる餅焼網で・・・

火力が強く、まるで黒焦げ?

豆餅の参上!(あのー、好物ですけど…)
うちは、今年は白い餅だけ(羨ましいなあ…)

四角い金属冠で、火の上において・・・(すごい工夫)
あのー、灰ころがしにならんがでは・・・

小生も、餅焼網を借りて、焼きました。

すぐ焼いてほおばる人、持って帰る人・・・

こちらは、上品に焼けたようで…

焼いたのをすぐに食べると、ほんとにおいしいー!

お神酒も、寒い時はいいなあ。

つまみもあるよー!

昔だったら「おねしょせんように、あたっていこ」

元気な、子供たち、雪が少なく、カマクラは無理…

あんな大きな塊も、もはやこんなに小さく・・・

たき火の大きなもの…くらいに。

このぐらいになると、好きな場所で、餅焼が・・・

お父さんたちいいもの食べとった・・・スルメやイカの姿揚

さあ、暗成ったし、子供たちは帰るよー(ママたち)


下に引いたトタンが見えています。

すっかり暗くなってきました。(午後5時半ころ)

最後は児童会の役員、青年会の人に、お任せ-!

後は、宜しくお願いです。