集団フッ化物洗口全国調査の結果について


NPO法人日本むし歯予防フッ素推進会議
福岡歯科大学助手  晴佐久 悟 

 NPO法人日本むし歯予防フッ素推進会議(以下NPO法人日F会議に略記する)は、2004年3月〜4月にかけて、NPO法人になってから初めての全国フッ化物洗口実態状況を調査した。その結果、日本全国で396,702人の子ども達が集団のフッ化物洗口を実施している。道府県別(表3)では、実施人数が多い上位5道府県は順に、新潟、愛知、静岡、佐賀、富山であり(表1)、前回調査(2002年)と比較して実施増加数が多い上位5道府県は順に、愛知、山口、佐賀、静岡、埼玉であった(表2)。フッ化物洗口実施状況の推移では、1983年、前回調査と比較すると、それぞれ、3.6倍、1.3倍であり、年々増加傾向にある(図1)。しかしながら、全国のフッ化物洗口普及率は、全国当該児童の約3.1%と低い状況にある。
 最近の日本のフッ化物洗口の動向としては、1999年に日本歯科医学会が「フッ化物応用についての総合的な見解」を示し、その中において「国民の口腔保健向上のためのう蝕予防を目的としたフッ化物の応用を推奨した。具体的には、現時点で、直ちに実施可能なフッ化物洗口法およびフッ化物配合歯磨剤の使用、ならびに臨床的応用法であるフッ化物歯面塗布法の実施を推奨する」と述べている。2003年には、8020運動の推進や国民に対する歯科保健情報の観点から、従来のフッ化物歯面塗布法に加え、より効果的なフッ化物洗口法の普及を図るため、厚生労働省から全都道府県宛に「フッ化物洗口ガイドライン」が通知された。そして、各都道府県で策定されている「健康日本21」の地方計画の中で、すでに17の県がフッ化物洗口実施に関する目標値を掲げている。

 最近の自治体のフッ化物洗口の動向としては、神戸市では、平成16年度の事業費で「フッ化物洗口全園実施」として523万6千円を計上し、秋田県では、平成16年度で県内100ヵ所の幼稚園・保育園でフッ化物洗口剤を配布する等の事業費の予算を計上しており、今後とも更なる全国の普及が期待される。
 フッ化物洗口は、う蝕予防効果が高く、手技が簡便で、安全性が高い、また、集団での利用は、個人利用と比較して、費用が低く、継続性が高く、リスク管理を行いやすい。従って、集団の場で実施されるフッ化物洗口は、う蝕予防対策として最も科学的な根拠に基づいた公衆衛生対策(Evidence Based Public Health Method)の1つであると考えられる。そして、フロリデーションは、フッ化物洗口法よりも安価で、地域全体を対象としており、生涯にわたってう蝕を予防できる優れた公衆衛生対策である。
 平成15年5月から健康日本21を法制化した健康増進法が施行された。そして、健康増進法、健康日本21の中に「歯の健康」が謳われており、今後ますます歯の健康の注目度は増してくる。もし、フッ化物洗口やフロリデーションの公衆衛生対策がさらに普及すれば、健康日本21の目標値の1つである「12歳児における1人平均う歯数を1歯以下にする(基準値2.9歯)」を達成し、国民の歯の喪失の抑制、しいては、健康日本21の目的である「国民のQOLの向上」、「健康寿命の延伸」に貢献することができると考えられる。
 NPO法人日F会議では、「2010年までにフッ化物洗口法を実施している児童を100万人にする」、「フロリデーションを複数の自治体で実現する」等の独自の目標を掲げ、さらなる普及に取り組んでいる。NPO法人日F会議は、この目標を達成するには学校職員や歯科保健行政のみに負担をかけるのではなく、その他の保健関連団体、地域住民等を含めて地域全体で取り組んでいく必要があると考え、今までの事業に加えて以下〜の事業を新たに展開している。今後とも、NPO法人日F会議独自の全国規模のネットワークを活かしながら、地域のニーズ即した事業を展開していく必要がある。
 NPO法人日F会議ホームページの開設(アドレス:http://www8.ocn.ne.jp/~nichif/)
日本、世界におけるフッ化物に関する情報を蓄積しており、新しい情報があれば随時アップデートをしている。また、情報データファイルをダウンロードできるように工夫されている。
 メーリングリスト事業
全国のフッ化物の情報を会員に迅速にメールで伝達できるようにしており、現在約100名以上が登録している。フッ化物を専門にしている大学職員、行政職員、開業医も登録しておりフッ化物の質問等も受け付けている。
 研修会の普及・支援事業等
 各地域での研修会の実施・支援、講師の派遣等を実施している。