DENTAL TODAY 200191日号 3

日本学術会議  齲蝕学・歯周病学研連シンポジウム

厚労省の瀧口課長などが講演

 

日本学術会議が主催した齲蝕学・歯周病学研究連絡委員会シンポジウムが、7月同講堂で開催された。「カリオロジーOrder-made Dentistry」をテーマに行われた今回は、…(中略)…こうした中で,現在の歯科界を巡る状況を瀧口徹氏(厚生労働省歯科保健課長)が、「保健医療制度における,齲蝕対策」を演題にして解説した。要旨は次の通り。

 

瀧口氏は1)少子高齢化の医療経済的な影響、2)保険制度改革、3)8020運動・健康日本214)予防手段、5)歯科の新技術研究開発動向などを,資料を基に説明した。それによれば歯科疾患の特性:歯科医療費は総医療費の9.2%,齲蝕は小児期、歯周疾患は概ね40歳以降の年齢特性。咬合状態の治療は成長期が重要。齲蝕は不可逆性,重症歯周病は難治性で予防,発生抑制が重要、小児期齲蝕は個人衛生の強化、歯周疾患も個人衛生の強化と定期的歯石除去等で相当程度予防可能,重症な小児齲蝕患者,重症な歯周疾患患者における再発抑制のための長期的な維持管理が重要。義歯,冠、ブリッジ等の補綴物が短期間で再製作に至らない至ることなく長持ちするためには長期維持管理が重要である。

一方,歯科医療の特性については,外来中心であり、入院ベッドは歯科大学(29校)で各40〜60床規模、医薬品の使用頻度と量が少なく、医科の約1/20(歯科医療費の約1.3%)の比率、医療機関収入のうち保険外診療の占める割合が比較的多い(地域差あり1020%)、歯科技工という歯科技工士に委ねる特殊な過程がある、とした。

また歯科界全体で取り組んでいる”8020運動”については、「今後の歯科保健医療の在り方に関する検討会の中で,8020運動を推進していく観点から”かかりつけ歯科医機能”を活用した地域における齲蝕予防対策,歯周疾患対策、喪失歯補綴対策等を推進して行くことが求められ、平成9年度から歯科保健推進事業の中で、かかりつけ歯科医機能支援事業を実施し、かかりつけ歯科医機能の普及定着を図っている」と強調した。またフッ化物の応用にも言及して、平成1111月に日本歯科医学会が「フッ化物応用についての総合的な見解」としてフッ化物利用を推奨する答申をまとめており、この見解を受け、齲蝕予防としてフッ化物の総合的研究を始めた、とした。

さらに、平成1212月に日本歯科医師会が、「齲蝕の発生を安全かつ経済的に抑制する手段として水道水フッ化物添加が、各種フッ化物応用の中で、有効性,安全性,利便性,経済性等に対する、公衆衛生的に優れた方法であると認識し、水道水への添加という手段の性格上、これの実施は、最終的には、地方自治体の問題であり,その経緯においては、地域の歯科医師会を始めとする関連専門団体,地域住民との合意が前提である」との見解を出したことを紹介しながら、「今後,自治体から水質基準(0.8mg/l)内でのフッ化物添加について技術要請があれば、水道事業者、水道利用者、地元歯科医師会等の理解を前提に、厚生科学研究の成果を活用する等により、歯科保健行政の一環として対応していきたい」と明言した。

歯科の新技術研究開発として「歯を長持ちさせる予防・治療技術の開発等に関する研究」で採択された研究課題としては、1)フッ化物による歯科疾患の治療・予防技術評価に関する総合的研究2)歯周疾患の予防・治療プログラムの開発に関する総合的な研究、3)病院等の歯科における地域歯科医療支援機能の推進に関する総合的研究、4)歯と咬合の長期的維持管理に関する予防・治療技術の評価に関する総合的研究、5)低齲蝕性食品による予防技術の応用並びに普及啓発に関する研究、6)歯科技工士養成施設における教育カリキュラムと教育技法の開発に関する研究、7)新指標「有効歯根表面積」を用いた定量的相対評価法に関する歯の将来残存予測評価法の開発に関する研究、を挙げた。

(以下略)

(参考)工事中!

平成13年度厚生科学研究・医療技術評価総合研究事業

「歯科疾患の予防技術・治療評価に関するフッ化物応用の総合的研究」