Promoting Oral Health: Interventions for Preventing Dental Caries, Oral and Pharyngeal Cancers, and Sports-Related Craniofacial Injuries

A Report on Recommendations of the Task Force on Community Preventive Services

Promoting Oral Health- Inte

http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/rr5021a1.htm

 口腔保健の推進:う蝕、口腔と咽頭がん、頭蓋顔面部のスポーツ外傷への予防的介入について

地域予防サービス特別対策委員会(the Task Force)の推奨報告書

要約

う蝕、口腔と咽頭がん、および頭蓋顔面部のスポーツ外傷を予防するために、地域予防サービス特別対策委員会(以下、特別対策委員会) は、特定の集団に対する予防的介入の有効性を調べるシステマティックレビューを作成しました。

特別対策委員会は、様々な予防的介入のなかでもう蝕予防効果が高い方法として、地域水道水フッ化物濃度適正化(水道水フロリデーション)と、学校で、あるいは学校と提携した形での小窩裂溝填塞(フィッシャーシーラント)予防処置プログラムを薦めています。また同委員会は、その他の予防法については証拠原則に基づき、有効無効ともに十分な証拠が認められないと述べています。したがって同委員会は、州単位、地域単位のう蝕予防のためのシーラントプログラム、前癌及び癌の早期発見のための集団介入、あるいはスポーツ時の口腔顔面外傷予防用のヘルメット、フェイスマスク、マウスガードの装着を奨励する集団介入については特に薦めていません。

十分な証拠がないという同委員会の報告は、すなわち介入の効果について、さらなる研究が必要であることを意味しています。研究結果が得られるまでは、我々はなんらかの基準によって介入の有効性を判断しなければなりません。本報告書では、特別対策委員会の推奨報告に対する補足情報、レビューの概要、そして同委員会が強く推奨する予防的介入を地域で行ううえで役立つ情報を提示いたします。

背景

20世紀を通じて、米国に住む大半の人達の口腔状態が本質的に改善されたにもかかわらず、国家は約5億回の歯科医院通院(2)を含む歯科サービスに、推定年間600億ドル(1)を費やしています。1996年に口腔疾患、および歯と顎の傷害のために費やされた推定入院費用は4億5100万ドルでした(3)。う蝕、口腔癌、そして頭蓋顔面部のスポーツ外傷は本来防ぎうるものです。死にも至る可能性を含め、そこから生じる経済的、人的損失を考えれば、老若男女を問わずすべての人に対し、生涯を通じて口腔保健を増進し疾病を予防するための介入は必要と考えられます。

永久歯のう蝕有病者率(未処置う蝕、う蝕が原因で喪失した歯、あるいは処置歯のいずれかが1本以上ある人の割合)は、5〜11歳児で26%、12〜17歳児で67%、そして18歳以上成人の有歯顎者では94%、と加齢に伴い増加しています(4、5)。12〜17歳児のう蝕有病者率は1971〜1974年調査の90%から1988〜1991年調査の67%に減少しています。この間、平均DMFT(一人が有するう蝕経験歯数の平均値。DMFTとは、D:未処置う蝕、M:う蝕が原因で喪失した歯、F:う蝕が原因で処置を受けた歯の合計本数)は6.2から2.8に低下しています(4、6)。また、アメリカ合衆国の5〜17歳児が有する永久歯う蝕の80%は、25%の子どもたちに集中して発生しているという報告があります(4、6、7)。低所得者層、メキシコ系アメリカ人、アフリカ系アメリカ人では、小児・成人ともに、高所得者層、非ヒスパニック系の白人よりも未処置う蝕が多く認められます(4、5、8、9)。低所得者層では、約1/3の子供たちに乳歯う蝕が放置されたままで、痛み、咀嚼困難、低体重の一因になっています(9)。

平滑面う蝕も激減しています。最近のデータによれば、小児の永久歯う蝕のうち90%は小窩裂溝に発生しており、約2/3は咬合面に限局して発生しています(4、7、10)。

毎年約3万人の米国住民が、口腔癌、咽頭癌(主に扁平上皮細胞癌)と診断され、約8千人の方がそのために死亡しています(7、11、12)。口腔癌・咽頭癌は、アフリカ系アメリカ人の男性では4番目に多くみられる癌で、白人男性では7番目に、また全女性では14番目に多いと報告されています(11)。これらの癌はほとんどの場合、末期の段階で発見され、顔貌をそこないかねない高額の治療(たとえば、外科手術、放射線療法、化学療法)を受けることになります (13)。口腔癌・咽頭癌の5年生存率は約54%ですが、少数派民族、特にアフリカ系アメリカ人の場合、死亡率は白人の2倍近くに及んでいます(11、12)。

疫学研究によれば、歯の外傷の約1/3、そして頭顔面部外傷の約19%が、スポーツに関連して生じています (7、8、14--16)。1997〜1998年の1年間にスポーツ関連の外傷で救急外来を受診した人は370万人でした。そのうち約70%、260万人は15〜24歳の年齢層でした。脳頭蓋、顔面、頭皮および首の外傷で救急外来を受診する人は、年間推定で全救急外来受診者の約22%となっています(14)。

これらの疾病や障害に陥りやすい集団に対して介入を強化することは、う蝕、口腔癌、ならびにスポーツ外傷の発生(率)や死亡(率)、そして経済的負担の軽減に役立ちます。本報告書ならびに関連出版物は、地域予防サービス特別対策委員会(the Task Force)から、州や地方健康局の行政責任者、管理医療組織、受療者、公衆衛生プログラムの財政責任者、口腔をはじめ全身の健康増進に関心がある人、あるいはその問題の責任ある立場へ指標を与えるものです。

はじめに

特別対策委員会(the Task Force)は、CDC、米国厚生福祉省(DHHS)、その他の連邦機関、また様々な公的・私的協力者の後援をうけています。ただし、本報告書で述べられている推奨については、当委員会がまとめたものであり、CDC、DHHSあるいはその他の団体による推奨ではありません。

このMMWR報告書は、「コミュニティガイド」(the Community Guide)のために作成されたシステマティックレビューのシリーズのひとつです。「コミュニティガイド」は、健康の増進、病気や傷害予防のために集団への介入を行った調査・研究に焦点を当てた数多くのシステマティックレビューを含む情報源になるでしょう。本報告書では、それらの根拠となったデータ−の選定および調査過程の全貌と、う蝕、口腔癌、頭蓋顔面部のスポーツ外傷を減少させるための地域介入に関する特別対策委員会の推奨の概要を提示いたします。この推奨の内容について、その根拠について(採用の適否、付加的利益、起こりうる害、実行にあたっての障壁など)、推奨した介入の経済的評価(利用可能な場合)について、ならびに今後の研究課題についての全容は、2002年にAmerican Journal of Preventive Medicineに発表される予定です。なおMMWR報告書についての詳細な情報は、CDCの口腔保健分野、国立慢性疾患予防・健康増進センター(電話番号 +1-770-4885301)で入手できます。また、この報告書は、http://www.thecommunityguide.orgでご覧いただけます。

方法

「コミュニティガイド」のためのシステマティックレビューの作成、ならびに推奨とその根拠についての詳細は別に述べられています(17)。簡単に言うと、学際的開発チームは、「コミュニティガイド」の各トピックについて以下の内容に従って調査を行いました。

* 調査プランの検討:立案、準備、グループ化、介入の選択

        系統的な調査と証拠の収集

* 質の評価とその有効性を示す証拠本体の強さの概要

* 他の証拠との関連情報(異なる集団や条件に対する介入の適否、付加的利益、起こりうる害、実行の障壁、経済的評価など)の概要

* 研究面でのギャップの識別と概要

調整およびコンサルテーションチームは、方策の包括的なリストを作成し、各介入の重要性とアメリカ合衆国での介入の実行度に対して自分達の認識に基づいて、レビューのための介入の優先リストを作成しました。う蝕予防の介入(地域の水道水フロリデーション、学校における、あるいは学校と提携した形での小窩裂溝填塞(フッシャーシーラント)プログラム、地域レベルのシーラントプラグラム)、口腔がん、および頭蓋顔面部のスポーツ外傷の予防とコントロールのための介入に焦点を当てました。これらの口腔領域の健康問題が年間歯科医療費支出の大半を占め、予防サービスの必要度を選択指標とする際に役立ち、しかもヘルシーピープル2010の目標(Table1)に掲げてあります。

介入の有効性を調べる際、調査対象となる研究は以下の条件を満たすものとした。a)選択する介入を評価するためにその初期調査を行っていること b)2000年12月31日以前に英文で発表されていること c)市場経済の確立した国で行われた研究であること(そうでない場合は調査対象としない。ここでは、その国外で行われた適切な研究も含まれる) d)介入を受けたグループと、介入を受けていない、あるいは介入が少なかったグループの結果を比較していること

時間と資源の制約から、次の候補介入の調査は除きました。

a)学校ベースで行われている健康教育プログラム、フッ化物洗口およびタブレットプログラム、あるいは口腔診査と受診勧告などの単一ならびに多因子介入
b)低年齢児のう蝕予防プログラム 
c)一般的、専門的および学校での教育プログラム 
d)複数の達成課題をねらった多因子介入。

調査の対象となった介入研究の分析にあたり、調査チームは、行われた介入とあらかじめ設定された結果(う蝕、口腔癌、前癌病変、頭蓋部のスポーツ外傷)の因果関係を示す骨組みを作りました。これらの疾患は、一般的、時に命を脅かす、資源の面でもQOLの面でも損失が大きい、既に予防方法がひろく知られている、という点から選択されました。口腔保健の推進は、公衆衛生活動の基本であり歯科開業医を排他するものではありません。これ以外の重要な頭蓋顔面健康問題(例えば、歯周病、奇形)の予防については別に調査、報告されています(8)。

さらに、前述の採用基準をパスした研究は、質の基準もパスしなければなりません。基準化された様式による検討の後、研究計画の妥当性と信頼度が評価されました。信頼度を基に、研究はgood, fair, limitedに分類されました(17)。有効性についての証拠そのものの強さは、利用可能な研究数、有効性を評価する研究計画の妥当性、研究の実行度、結果の一致度、効果の大きさを基に、strong, sufficient, insufficientに区別しました(17)。

「コミュニティガイド」では、多角的に各証拠を検討し推奨に値するものを決定・提示しています(17)。有効性についての各証拠の強さは推奨の強さ(例えば、有効性のstrong evidenceはstronglyに推奨された介入であり、sufficient evidenceは推奨される介入とされている)とダイレクトに対応しています。それ以外の証拠のタイプも推奨に影響を及ぼすことがあります。たとえば介入を行った結果、なにがしかの害が出てきたような場合は、たとえ対象とする結果に改善がもたらされたとしても、それは推奨に値しない介入となります。

ある介入の有効性がinsufficient evidenceだった場合、この結果はすなわちその介入の賛否を決定することにはなりません。ここで大切なことは、調査の不確実性を明確にし、今後さらなる研究の必要性があるということです。それとは対照的に、ある介入の無効性がsufficient,あるいはstrong evidence(つまり明かに無効)だった場合、その介入は用いられるべきではない、という推奨になります。今後同委員会は、よりよい推奨をめざし、経済面での情報を盛りこんでいかなければなりません。

結果

Medlineデータ・ベース*(1966年から2000年12月)の系統的な探索を行い(システマティックレビューを作成し)、調査に必要なおよそ4,000の論文を引用しました。さらに、作業チームのメンバーは、手作業で参考文献リストを探索し、また介入調査の経済面の研究報告を含むその他の関連引用文献を確認するために各分野の専門家の協力を得ました。全対象引用文献のうち130の研究が採用基準を満たしていましたが、うち94の研究は、実行度や研究計画が基準に合わなかったために除外され、最終的に36の研究が規定の条件を満たす研究対象として採用されました。

本報告書で有効性が検討された5つの介入についての評価は、上記の条件をクリアした36の研究の系統的調査(システマティックレビュー)と評価に基づいて行われています。これらの研究の実行度は、すべてgood あるいは fairでした(引用と詳細についてはhttp://www.thecommunityguide.orgを参照してください)。証拠(研究結果)から得られた各介入の有効性を基に、特別対策委員会は、地域の水道水フロリデーションと、学校で、あるいは学校と提携した形での小窩裂溝填塞(フッシャーシーラント)予防処置プログラム(すなわち、個人歯科医院あるいは公的な歯科クリニックでの実行を含む)を強く推奨しています。しかしこれ以外の3つの介入については、insufficientという結果が得られたため推奨していません(Table 2)。学校でのシーラントプログラムと学校と提携した形でのシーラントプログラムのどちらが効果的かという判定は、今回の調査結果からはできませんでした。

地域やヘルスケアシステムでの特別対策委員会の推奨の利用

口腔の保健状態が病気を引き起こし、時には人を死に至らしめ、また口腔保健の推進活動がアメリカ合衆国各地で展開されるとすれば、本報告書の推奨は多くの地域にあてはまるでしょう。地域行政、学校機関、ヘルスケアシステム、歯科医院は、ここで推奨されている介入プログラムについて計画をたて、以下にあげる項目に沿った実行サイクルに取り組んでいくことが望まれています。

        国の目標と目的に照らして自分たちのゴールを評価すること。

        取り組む集団の口腔保健状態の現状を評価すること。

        介入活動の現状と歴史を調査すること。

        介入効果による改善の機会と口腔状態を識別すること。

地域が抱える問題を解決するために必要な介入法の組合わせ方策を決定するためには、行政責任者は州法および地域法と規定、活用可能な資源、行政機構、実働組織と開業医の社会経済的環境などを考慮に入れるべきです。また、その際には本報告書ならびに以下の報告書の推奨とその根拠を考慮に入れるべきでしょう。米国衛生長官報告書(8)、ヨーク大学のNational Health Service Center for Reviews and Dissemination (18)、CDC(19、20)、Institute of Medicine(21)、Canadian Task Force on Preventive Health care(予防ヘルスケアに関するカナダ特別対策委員会)(22、23)。

特別対策委員会は、地域の水道水フロリデーション、ならびに学校で、あるいは学校と提携した形での小窩裂溝填塞(フッィシャーシーラント)予防処置プログラムを強く推奨しています。同委員会は、経済的情報を加味した推奨を作成していませんが、もしこの経済的情報を併せて活用できれば、地域行政の担当者が政策決定をする上で大きな助けになることでしょう。地方の目標、資源が許すならば、これらの介入を採用し広めるべきです。またこれらの介入を採用するにあたっては、他地域、供給者サイド、また個々人の、地域におけるう蝕予防戦略を考慮しなければなりません(7、8、19)。

特別対策委員会は、地域レベルで調査された他の3つの介入方法(すなわち州レベルあるいは地域レベルでの小窩裂溝填塞(フィッシャーシーラント)予防処置プログラム;前癌病変ならびに癌の早期発見のための集団的介入;スポーツ時にヘルメット、マスク、マスクガードの着用を促す集団介入)については特に推奨を行わないという決定を下しました。このことは、これらの介入が有効であるかどうかを調べるために、さらに質の高い(前述にて定義[17])研究をする必要があることを示しています。これらの研究結果が利用できるようになるまで、我々は他の基準でこれらの介入の有用性を判断せざるを得ません。地域レベルの小窩裂溝填塞(シーラント)予防処置プログラムの有効性は未確定ではあるものの、シーラント法の臨床的な安全性ならびにその有効性は確立されています(24、25)。

多角的なアプローチが口腔癌のリスクを減らすと考えられていることからも、今回得られた結果だけにとどまらず、他のグループの推奨内容をあわせて考慮するべきです(8、20、22、26、27)。たとえば、口腔癌ならびに咽頭癌の主要な原因のひとつであるタバコについては、禁煙を広めることが勧められています (8、27——29)。また臨床医は、リスクの高い行動習慣(喫煙や大量飲酒など)をもつ人、あるいは癌が疑われるような症状を示す個々人に対し、定期的な口腔診査をうけるよう提案しています(8、22)。

今回特別対策委員会は、コンタクトスポーツ(体が接触するような競技)時の頭・顔面部保護用具着用に関する地域レベルでの推奨を行っていません。しかし、フットボールやアイスホッケーのようなある種の団体競技におけるヘルメットやマスク、マウスガードの着用が義務付けられて以来、頭顔面部外傷ならびに口腔外傷の頻度は減少し、また重症度も軽減されています。

地域ガイドに関する追加情報

「地域ガイド」の各トピックスの内容が完成し準備・公表されています。各トピックスごとにその推奨と根拠(証拠)がまとめられ本として出版されます。社会文化環境、癌、性行動に関するテーマは、2001年〜2002年に出版される予定です。ワクチンで予防可能な疾病、喫煙防止と禁煙、自動車運転中の事故、そして糖尿病に関するトピックスはすでに出版されています。これらの報告書、特別対策委員会(the Task Force)、「地域ガイド(Community Guide)に関する追加情報は、<http://www.thecommunityguide.org>で入手できます。