DENTAL TODAY 515日号 学術forum

このページの最後に 『DENTAL DIAMOND』の短信欄のコメントも載せました

日本のむし歯予防のためのフッ化物応用、とりわけ水道水フッ素化(水道水フッ素濃度適正化:water fluoridation)の推進の立役者の故山下文夫先生が亡くなられて、もうすぐ1年になろうとしています。

そのご功績を称え、4月にアメリカでAAPHD特別賞が故山下文夫先生に送られました。DENTAL TODAY 5月15日号にその記事が載ってましたので、もうすぐ1周忌を控え、改めて、先生のご冥福をお祈り申し上げる意味におきまして、ご紹介申し上げます。

また、この1年で、少しづつ水道水フッ素濃度適正化に関して、進展していることは思いますが、自分も含め関係者に、今1度努力を喚起し、故山下文夫先生のご霊前に、少しでも早く実現の報告をしたいものだと思います。(山本武夫)

「故山下文夫氏が卓越した功績により AAPHD特別賞を受賞」

  『永年の予防歯科・地域活動が評価される』

 AAPHD(米国歯科公衆衛生協会)とASTDD(地域歯科保健担当官協会)のよる合同会議が第2回全国口腔保健会議と銘打って、430日〜52日まで、アメリカ・オレゴン州のポートランドにある、マリオネットホテルダウンタウンで開催された。AAPHDの昨年度の受賞者として、歯科医師あるいは一人の市民として予防歯科並びに地域活動に全精力を傾けていた故山下文夫氏(宮崎県都城市開業・昨年7月逝去)が決定していたが、今回の会議の中で、これらの表彰式が行われ、日本から出席した奥様の山下美秋さんに、ダシャンカ・クレイマン前会長から特別賞が授与された。

 これに対し美秋さんは、「20年以上前に、主人は日本での水道水フッ素化との戦いを始めました。多くの方々が主人の協力者となり、彼の事業と水道水フッ素化計画に支援してくれました.彼らの援助と支援は私の主人に対して、また水道水フッ素化計画に対して,真の変化をもたらしました.今日、日本において水道水フッ素化は身近のものとなりました。しかし、開始されるまでには、まだ多くの事が横たわっています。山下文夫に代わり今回のAAPHDの特別賞受賞に深く感謝申し上げますとともに、アリス・ホロビッツ(米国国立衛生研究所上席研究官)、ハーシェル・ホロビッツ(歯学研究・衛生コンサルタント)、キム・ジョンベイ(韓国・ソウル大学教授)、キム・ジンボム(韓国・プサン大学教授)ら各博士にも感謝申し上げます」と謝辞した。さらに「もし主人がここに居合わせたら、この素晴らしい賞を喜んで受け、名誉に感じたことでしょう。同時に、まだ実現していない水道水フッ素化促進のための作業をしなくてはいけない、日本に帰らなくては行けない、とも言う事でしょう」と述べ、出席した人たちに、故山下氏の思いを伝えた。

AAPHD 1937年設立。口腔衛生の改善に挑戦する会議に焦点をあてている。健康教育及び健康増進を通して、疾病予防に効果的な努力の推進を付託されており、世界で最も大きな規模の歯科公衆衛生組織。故山下文夫氏は永年この会員として尽力していた。

 なお山下氏と生前、深い交流があったアリス・ホロビッツ博士は次のようなメッセージを送り、その功績を称えた。

『山下文夫氏を称えるアリス・ホロビッツのメッセージ』

 今日ここに故山下文夫氏夫人の美秋様、同ご両親、そして親しい友人である仲田俊一氏(前日本コルゲート・パルモリーブ社取締役事業部長)に、ご同席をいただいていることに大変嬉しく思っています。この賞は地域を基盤とするプログラムや住民の指導を実施することにより、公衆口腔衛生の改善に意義ある活躍した、当会の国際会員に授与されるものです、これに関連して、この賞の負担を寛大にも引き受けていただいた、コルゲート・パルモリーブ社に感謝します。むし歯予防に対する山下氏の努力は著しいものがありました.彼の活躍には皆様も教えられることが多くあったかと思いますが、多方面にわたり多くの貢献をしています、山下氏は宮崎県で開業していた一般の開業歯科医師でしたが、特に卓越した公衆衛生の実務者でもありました。

近隣地域住民への啓発

 日本歯先進国の中では、う蝕罹患率は最も高いのですが、この主たる理由は、水道水フッ素化が実施されていないことです。また、最近までフッ素配合歯磨剤のしようが比較的少なかったことにもあります。永年AAPHDの会員であった山下氏は、ほかの誰よりも、むし歯予防について、多くのことを日本にもたらしたのです。昨年夏までは、宮崎県で歯科医院を開業していましたが同時に、むし歯予防するのに、多くの形態、様式、実施方法においてフッ素の効用について啓発するために、ビジネスマン、主婦、定年退職者、幼児学童、ご両親、夫人の仲間たちによる組織づくりを行ってきました。また山下氏は自己資金をもって、近隣地域のすべての児童やその家族へ、フッ素洗口や教材を準備し提供していました。また彼はあらゆる形態の報道機関を通して、日本における水道水フッ素化の2大障壁は日本歯科医師会と厚生省であると指摘していました。

正しい情報を提供する責任

 昨年11月には水道水フッ素化に向けて意義のあった、大きな大会を東京都で開催することができました。この結果、一つの地域でフッ素化が合意され、多くの地域がそれに続くものと期待されています。さらに重要なことは、厚生省が水道水フッ素化に関する方針を変えたことです.ある時、仲田氏に「山下氏はなぜ、そんなに公衆衛生に情熱を燃やすようになったのか」と尋ねたことがありました。その答えは「地域社会における歯科医師の役割について山下氏の信念ではないか」ということでした。つまり山下氏にいわせると「本当に市民に感謝され、信頼され、ともに地域に生きるためには、市民の本当に望む予防に関心を持ち、学び、正しい情報を提供する責任がある」ということでした。

公衆衛生の見本示す

 彼の努力は口腔衛生のみ限られていないことに言及することが大切です。夫人とともに、体の不自由な老人や個人の家に訪問入浴サービスを実践していたことです。地域社会への接触とヘルスプロモーションに対する思い込みは,ハッキリしています。山下夫人には、心からこの賞をお受けいただきたいと思います。ご主人の名誉を称え、その多くの功績を認めるこの機会を持ち得たことを、私としても喜ばしく思っています。また、あなたとご家族、それにあなたの地域社会、そして国の健康を改善してきたすべての友人たちを知り得たことは名誉なことです。山下氏はわれわれすべてに、公衆衛生が何たるかの見本を示す遺産を残してくれました。

「DENTAL DIAMOND」7月号 p.149 Tooth station の短信欄

故・山下文夫先生がAAPHD特別賞を受賞

 AAPHD(米国公衆歯科衛生協会)の国際分野において、地域歯科に優れた功績をあげた国際会員に対して贈られる2001年度特別賞を、故・山下文夫先生(宮崎県都城市開業、昨年7月逝去)が受賞した。これは、同先生が日本におけるフッ素の利用促進に尽力されるとともに、地域社会の健康づくりに多大な貢献をされたことが評価されたもの。4月30日の.オレゴン州ポートランドで開催された同協会による会議のな化で表彰式が行われ、夫人の美秋さんに特別賞が授与された。