かのベルギー騒動顛末記(ベルギーフッ化物ストーリー)

今年の7〜8月に、フッ化物サプリメント(補充剤)の販売を禁止するというベルギー厚生大臣措置の報道が世界を駆け巡りました。

FDI(世界歯科連盟)に対して、ベルギーのDr Stefaan Hanson が、この間の経緯を寄稿してくださいました。大変興味深く一読に値する内容になっています。

 

1. 事実 

 2002年7月に、ベルギー厚生省は、フッ化物錠剤、フッ化物滴下剤およびフッ化物チューインガム(処方箋なしで店頭購入できる)のようなフッ化物サプリメント(補充剤)の禁止措置をとり、これを2002年8月1日に布告しました。

2. 報道

 政府の報道発表とインタビューでは、フッ化物の毒性について根も葉もない非科学的な内容まで飛び出てきて、一般の人々はもちろん、歯科専門家にも衝撃が走りました。政府筋では、今回の禁止措置は、「フッ化物摂取規制の手始め」というものでした。また、Aelvoet厚生大臣は休暇先で、さらなる規制計画があると発信しました。今回の禁止措置にはフッ化物配合歯磨き剤は対象外とされていました。その理由は、厚生省がフッ化物配合歯磨き剤のう蝕予防効果を認めたからではなく、欧州連合(EU)の規制条項に触れるからというものでした。 Aelvoet厚生大臣は次のように語りました。「今回のようなケースでは、欧州連合内で同一歩調であることが望ましいが、欧州連合の体制が整うまでは我が道を行く」と。

そこで、テレビ、ラジオ、新聞は一斉にベルギーではフッ化物配合歯磨き剤も禁止対象となると報じたのです。

3. 反応

感情は高ぶりました。学術的あるいは専門的歯科界と事前の相談もなく、今回の禁止措置は一方的に出されました。大学と歯科医師会は、メディアならびにAelvoet厚生大臣のやり方に迅速に反応しました。フッ化物摂取のコントロールという規定内容についてはともかく、マスコミの先走った行動については厳しく批判しました。人々にフッ化物配合歯磨き剤が身体に有害であるという印象を与えたからです。これを機に、フッ化物反対派は様々の記事にこの誤報を悪用しました。オランダ、ドイツ、イギリスのテレビはベルギーのフッ化物サプリメント禁止を報じました。そこで、当局はAelvoet大臣の不在中に、事態の打開に動き始めました、この間、世界歯科連盟(FDI)と同連絡委員会から、情報の要請について連絡があり、支援の申し出がありました。

4. 事態の正常化

夏季休暇開けに、Aelvoet厚生大臣はマスコミ発表の思いがけない反響に動揺し、ベルギー歯科医師会の代表団を緊急に招いて、8月21日に会談が行われました。大学教授の正確な説明ならびにFDIから提供された幅広い科学的な情報のおかげで、大臣はまもなく事の重大さを認識しました。どのようにしてフッ化物サプリメント禁止(すなわち、食物サプリメント)という処置が取られたかについてきちんとした情報を提供し、それにフッ化物配合歯磨き剤は安全でう蝕予防効果があるとはっきりと述べる報道発表が行われました。一方で、Aelvoet厚生大臣は親たちにフッ化物配合歯磨き剤は食べ物ではないと指摘しました。

5. 結論

 現在ベルギーでは、以前と同じようにフッ化物配合歯磨き剤は利用され、一方、フッ化物補充剤(滴下、タブレットおよびチューインガム)は医者か歯科医の処方があれば店頭購入できます。この方策は全般的な有効なう蝕予防を念頭に入れたものであり、同時に個々のフッ化物プログラムからのフッ化物の過量摂取を防ぐことができます。

 6. エピローグ

 825日付でMagda Aelvoe厚生大臣は辞職しました。辞職の直接的な引き金は、ネパールへの武器輸出の承認でした。Aelvoet厚生大臣は副首相として、この(武器輸出)問題に深く関わっており、所属政党である緑の党で論議が巻き起こったからです。

また、今回の問題は、Aelvoet厚生大臣が個人的にフッ化物に対して極めて懐疑的であったことから引き起こされた彼女の『勇み足』が原因と言われています。

Stefaan HansonVVT(フランドル歯科医師会)会長  stefaan.hanson@vvt.be

FDIは、今回の問題に対し、FDI科学マネージャーであるAsbj0rn Jokstad教授の効率的な援助を得て、ベルギーのみなさんを支援することができたことを誇りに思います。

関係団体のみなさん、FDI科学マネージャーから科学的な支援を受けることを今一度確認していただきたいと思います。

お気付きの点は、次のメールアドレスまでお知らせ下さい: science@fdiworldental.ora


原文【English】