平成12年度 歯科保健指導者研修会(福井県)

                                    共催  福井県・(社)福井県歯科医師会

プログラム

とき   平成12年8月23日(水)

ところ  福井県自治会館  2F 多目的ホール

10:00〜10:15 挨拶  福井県福祉環境部健康増進課課長  菊岡修一

                 (社)福井県歯科医師会副会長     斉藤愛夫

10:15〜11:40 講演  「幼児期、学童期の歯科保健予防対策について〜フッ化物の応用〜」

                 富山県歯科医師会 理事         山本武夫

11:40〜12:00 質疑応答

12:00〜13:00 昼食・休憩

13:00〜14:30 講演  「ちいさな町の歯科保健レシピ 〜『8020の里』づくりに挑戦〜」

                 兵庫県村岡町国保兎塚・川会歯科診療所所長・同歯科保健センター所長  中田和明

14:30〜14:40 質疑応答

14:40〜15:10 事業報告  平成11年度歯科保健推進事業

                    成人歯科保健事業          敦賀市 岸田百合子

                    在宅要介護者歯科保健推進事業 芦原町 上坂とみ子

福井県平成12年度歯科保健指導者研修会 抄録

「幼児期・学童期の歯科保健予防対策について〜フッ化物の応用〜

富山県歯科医師会理事(小児・学校歯科保健担当) 山本武夫

 新しい世紀がもうすぐそこまでやってきている今日,ようやく我々歯科関係者は,歯を失う最大の原因であるむし歯や歯周病を予防する方法を手に入れかけています。すでに獲得した海外の先人の情報を伝えるために、努力を惜しまぬ心ある歯科医たちが蔭で活躍しています。残念ながら,過去、日本ではほんの一部しか,情報が知らされなかったのです。日本歯科医学会でも、フッ化物検討部会のむし歯予防のためのフッ化物推進の答申に対し年末ようやく,了承しました。アメリカ,オーストラリア,北,昨欧やアジアなどでは,国家単位で小児のむし歯有病率を激減させることができました。成功の要にはフッ化物の応用とシーラントがあり、その他代用糖、歯口清掃法、定期健診が工夫されています。

 我が国でもようやくむし歯の減少の傾向が見られてきました。しかしまだ先進国に比べ約3倍の多さで、全体的にみると予防の時代はまだ始まったばかりといえます。これからのむし歯予防には市町村を単位とした公的事業と、個人の努力が重なる必要があります。即ち、フッ素利用を基盤とした有効な方法を継続利用できる社会システムの整備と、歯や口の健康を大切に考える個人の動機付け教育が重要です。

 富山県では,平成7年度より,県民の健康の基本となる歯と歯ぐきの健康づくりを総合的,体系的に推進するため「富山県歯の健康プラン」を策定しました。この中の「市町村むし歯予防パーフェクト作戦事業」により,幼児期・学童期の歯科保健対策が進められることになりました。

 歯を失う悲しみは失ってから初めて分かるもの、かもしれません。今まで、歳をとったら歯を失うことはしょうがない、とあきらめる傾向にありました。しかし、歯は再生能力の無いもので、これを失ってからでは本当の意味で元に戻す方法はないのです。むし歯は小児から高齢者まで生涯を通して人々を悩ませています。8020達成のためには、歯の寿命を長くする方法として,スタート時点である小児からのむし歯予防が最も重要です。そこで、歯を失わないために、また歯の寿命を長くするために、というところから以下のようにお話を進めさせていただきます。   

 

1. 序論

  1. 8020運動
  2. 歯喪失原因
  3. 2大疾患

.「富山県歯の健康プラン」

  1. 計画策定まで
  2. 富山県歯科保健医療対策会議
  3. 県民歯科疾患実態調査
  4. プランの内容 

.「市町村むし歯予防パーフェクト作戦事業」

  1. 事業の意義
  2. 事業の内容

.フッ化物応用

  1. フッ素の性質や歴史的背景
  2. フッ素の安全性
  3. フッ素の有効性
  4. フッ素利用の実際(パーフェクト作戦での)

  @ フッ素塗布

  A フッ素洗口

  B その他の応用法

.究極のむし歯予防法

  1. 水道水フッ素添加
  2. 世界で広がる全身応用法
  3. 世界の実施状況(韓国,アメリカなどの実例)
  4. 水道水フッ素添加と8020運動
  5. 「健康はみんなの願いです」

福井県での講習会の大事なポイント(山本武夫)
  • 「先進県」におごる無かれ

   我が富山県は,かって新潟県を先進県とみて学んだ。しかし,今はどうか?実績と今後は,必ずしも一致しない。

  • むし歯予防に,地域格差・人種間格差などありえない

   フッ素が,ある県で有効で,ある県で無効なんてありえるはずが無い。

   ましてや,日本人だけが水道水フッ素化やっても害があるなどという話は無い。

  • 正しい情報をいかに伝えるか,これが歯科専門家としての責務である。

   今まで,いかに誤って伝えられているか。

   (フッ化物の今まで普及しなかった原因)

    @ 国,厚生省が保健政策として取り上げなかった。

    A 大学研究機関が,研究対象として1部でしか扱わず,また,教育機関としても大学教育にフッ化物応用をとり入れなかった。

    B 歯科医師会が積極的に奨めなかった。

   (例えば,『健康日本21』について見ると)

本来なら,この健康政策は,アメリカの「ヘルシーピープル2000」を参考にしているが,しかしながら,1番大事なパブリック・ヘルス(公衆衛生:歯科ではフッ素の全身応用つまり水道水フッ素化など)を取り上げず,個人衛生(フッ素塗布やフッ素入り歯磨き剤)に終始している。国の健康施策が,国民の真の健康を考えるならば,公衆衛生の基本施策をはずすとは,あきらかに間違えている。

  • 国が,厚生省がすべて正しいという前に,1回,状況判断すべきである。

   血友病の血液製剤のエイズ問題、脳硬膜移植患者のヤコブ病感染など,国の責任が問われる問題は山ほどある。

  • 最近は,インターネットで,情報を収集することができる。

   何が正しいか,しっかり判断できるようにすべきである。

   視点を国民サイドに置いたものか、歯科医師会サイドのものか,行政サイドのものか見極めねばならない。

  • 歯科関係のCMについて、一般国民が商品を購買しやすい様に,あの手この手で,誤った知識を植え付けている。

   ひところの「アパガード」や,最近の「キシリトール」「リカルデント」などの売り込みは,あたかもそれしかないような印象を植え付けている。

   また、ライオンをはじめとする,主要歯磨きメーカーも、むし歯予防には,プラークコントロールと,歯磨き第1主義を通し,歯ブラシ購買を強く強く訴えている。視点が,誤っているのである。

当日配布資料

  1. フッ素によるむし歯予防関係HPのアドレス・著書紹介
  2. 1999321日読売新聞書評「むし歯とキッパリ別れる本」
  3. 1995年2月25日北日本新聞記事「健康プランを策定」
  4. 1995511日富山新聞記事「市町村に相談窓口」
  5. 健康プラン普及版「いい歯 カムカム すこやか富山」
  6. 健康プラン普及版「むし歯予防パーフェクト作戦」
  7. フッ素予防 Q&A(3版)富山県歯科医師会小児・学校歯科保健部
  8. 1999年9月4日読売新聞社説「虫歯予防に有効なフッ素水道」
  9. 2000年5月14日朝日新聞日曜版ふしぎの国の医療「フッ素 欧米では虫歯予防の主役」
  10. 2000715日読売新聞記事「水道にフッ素添加で虫歯予防」

(本)

(パンフ)

「一生自分の歯で食べよう」

平成12年8月24日掲載  福井新聞記事

県民の虫歯ゼロへ 養護教諭らが研修

県,県歯科医師会

 県と県歯科医師会は23日、福井市の県自治会館で、歯科医師や小中高校の養護教諭、各地区の健康福祉センター職員ら約120人を対象に本年度の研修会を開いた。

 富山県歯科医師会の山本武夫理事と、兵庫県の兎塚・川会歯科保健センターの中田和朗所長を講師に招き講演と質疑応答を行った。

 山本理事は「虫歯に関しては、大事なのは治療より予防」と話し、歯科医師が自治体に対しアドバイスや支援を行っている富山県の例をスライドで紹介。また,外国での成功例を挙げ,虫歯予防へのフッ素の利用推進を強調。参加者は,メモを取りながら真剣に耳を傾けていた。