北陸中日新聞富山版 20011022

 利賀村で導入検討「フッ素水道水『安全』強調」

 推進派・山本さんに聞く

 歯磨き剤などに使われるフッ素。これを水道水に微量のフッ素を入れて虫歯を予防しようと、利賀村などで検討が進められている。これに対し「飲料水添加には安全性に疑問がある」と環境問題に取り組む団体から反対の動きも…。推進派の市民団体「富山むし歯予防フッ素推進市民ネットワーク(通称・And You(あゆ)の会)」代表の山本武夫歯科医師=井波町山見=は「既に実施している米国や韓国などのように、安全で効率良い虫歯予防を実現させたい」と強調する。なぜ今,フッ素水道水か、山本さんに話を聞いた。(福光通信部 桑野隆)

『虫歯予防の究極』

 【実現へ課題も】

<添加の効果は>

 「懸命に歯磨きしても,歯のすき間など細かな部分まで毛先が届かず、虫歯予防効果は十分ではない。水道水フッ素が入れれば常にフッ素イオンが歯を覆うことになる。虫歯予防の究極はこれしかない。」と力を込める山本さん。

 フッ素は、お茶,野菜,海草類などの食品のほか,海水など自然界にも微量に含まれている元素。フッ素イオンが歯の表面を覆うと,酸によって溶け始めた初期虫歯の修復作用(再石灰化促進作用)が科学的に証明されている。「虫歯予防は今まで、学校や家庭で甘味制限と歯磨き中心の対策をしてきたが、虫歯患者はまだまだ多い」という。

<根強い反対論も> 

 水道水は,塩素や硫酸アルミニウム、塩化第二鉄などの薬品を使って浄水されている。新たにフッ素を添加することについて、今春から利賀村が研究調査中だが,抵抗感を持つ人も少なくない。県内の内科医らで作る団体が今夏、「30年ほど前、兵庫県宝塚市でフッ素濃度の高い六甲山系の水を飲んで歯が茶色に変色する斑(はん)状歯などの問題などが起きている。軽々に使用すべきでない。」と反対する意見書を同村に出した。

<反対派に反論>

 山本さんは,反対派に真っ向から反論する。「厚生労働省が定めた0.8ppmの微量なら人体に影響はなく、虫歯予防に期待できる。歯が形成される子供時代に過剰摂取しなければ,斑状歯になることはない。フッ素への正しい知識を持つことだ。」と話す。 さらに「反対派は行政のズサンな水質管理を警戒しているのでは。現在は技術が進歩し十分管理が可能」という。

<村民合意を提案>

 WHO(世界保健機関)は1969年に「安全性に問題はない。う歯対策の有効な手段」と加盟各国に水道水フッ素化推進を勧告。米国や韓国など56カ国で実施しており、村職員と山本さんらは今春、韓国の水道施設を視察した。村内には11ヶ所の小規模水道施設があるが、小規模用のフッ素添加装置も日大松戸歯学部で開発、今秋、学会で発表され,対応できるようになったという。山本さんは「日本は”フッ素途上国”。利賀村は、説明会などを開いて村民に正しい知識を持ってもらうことだ。村に合った設備計画を立て,村民合意の上で一つずつ進めていけばどうか」と提案する。

 年度内に出す利賀村の結論に、注目が集まる。

『写真は、「虫歯予防の究極は、水道水フッ素添加しかない」と強調する山本武夫さん=井波町の医院で』

 北陸中日新聞富山支局の桑野記者が,良い記事を載せました。反対派が利賀村に乗り込んだ時,一方的に反対派の言い分を聞かされて、誤解を与えた記事を書かされました。しかし、自分で取材を繰り返し、検証してそうではないということがわかり、今回の記事になりました。正しいことを書いて,読者に伝えようとする桑野記者には,心より敬意を表したいと思います。