富岡甘楽歯科医師会からNHKの抗議と質問書
地域の歯科医師会を代表する形で、富岡甘楽歯科医師会からNHKに対して抗議がされました。担当の南解説委員は国民に十分議論してもらいたいと言いつつ、反対派の意見をまともに受けて、放送しました。直接抗議しましたが、確信犯的な受け答えしかないため、抗議、質問書の回答を求めることになりました。

今回、萩原専務理事の了解を頂いたのでその内容を、HPに明らかにします。

富甘歯医発第13−54号

平成13年6月11日

NHK解説委員長 様

社団法人富岡甘楽歯科医師会

会長 市川智旦

 

 

ラジオ夕刊の放送内容についての抗議と質問

 

拝啓 梅雨の候、貴職におかれましては、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。平素より、歯科保健に関する報道には、格別のご高配を賜り厚くお礼申し上げます。

さて、昨年12月の日本歯科医師会の 「フッ化物応用(水道水へのフッ化物添加)に関する見解」 の発表以来、テレビ、新聞等で水道水フッ素化などのフッ素利用について、たびたび取り上げられるようになってきました。

平成13年1月には、NHK総合テレビの番組 「あすを読む」 で、水道水フッ素化について、村田幸子解説委員が問題の本質を捉えたすばらしい解説をしました。反響も非常に大きく、とても好評で、NHKの真価が発揮された番組になったと思います。

ところが、5月9日放送の南解説委員が担当したラジオ夕刊では、WHO、FDIなど世界中の専門団体が一致して推奨する 「水道水フッ素化」 について、何を根拠にしたのか、賛否両論という形で取り上げ、境脩教授と秋庭賢司氏の意見を同列に扱っていました。さらに、6月4日、5日にも、ラジオ夕刊では、水道水フッ素化について賛否両論という形式で取り上げました。4日には沖縄県の歯科医師が水道水フッ素化を推奨し、5日には主婦連合会の副会長が、フッ素洗口、フッ素塗布、フッ素配合歯磨剤などの局所応用まで否定した発言をしていました。

番組の冒頭の説明で、「むし歯を予防するための水道水フッ素化について、今年1月厚生労働省は、今後自治体から技術支援の要請があれば応じるという方針を明らかにしました。むし歯予防のため水道水にフッ化物を添加することについては、有効で安全な方法だとして推進する意見がある一方で、発癌性の心配がある、また、水道水をフッ素化すると消費者がフッ素化していない水道水を選択できない、として反対する意見があります。そこで、この問題について双方の意見を聞いて、視聴者の皆さんがこの問題を考える手掛かりとしたいと思います」 とのコメントが述べられています。

しかし番組の内容は、非科学的な情報をもとにした秋庭賢司氏の意見や主婦連合会副会長のフッ素の局所応用すら否定する感情的な意見を全く同列に取り上げることにより、いたずらに視聴者の不安を煽るだけのものになってしまったと言わざるを得ません。

このような住民の不安を興味本位に煽るマスコミの報道姿勢が、日本のフッ素利用を大幅に遅らせてきた大きな要因になっています。

NHKの公共性を考えれば、このような無責任な報道姿勢は、NHK全体に対する信頼性を失墜させることにもなりかねません。今回の偽情報の 「垂れ流し」 に厳重に抗議すると共に、今後の改善を強く要望いたします。

なお、今後の参考にしたいと思いますので、下記事項について、NHKの解説委員会の見解を、6月末日までにご回答くださいますようお願い申し上げます。ご多用のところ誠に恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。

敬具

 

 

@ 世界保健機関〔WHO〕は、1969年の第22回総会において、水道水フッ素化の推進決議をし、加盟各国に対して「水道水フッ化物添加を検討し、実施可能な場合にはこれを導入すること、不可能な場合にはフッ化物の他の応用方法を検討すること」を趣旨とする勧告を行っていますが、日本はその共同提案国になっています。さらにWHO は、1974年にはフッ化物応用を勧める再勧告を、1978年には再々勧告を出しています。

この事実について、NHK解説委員会の見解を教えてください。

 

A 国際歯科連盟〔FDI〕は、水道水フッ素化について 「う蝕の発生を安全かつ経済的に抑制する手段として、現状における最も有効な公衆衛生的施策であり、すべての関係当局にこれを推奨すべきこと」 を決議しています。

この事実について、NHK解説委員会の見解を教えてください。

 

B 水道水フッ素化は、最も優れたむし歯予防法として、現在56か国で実施され、3億5千万人以上がその恩恵を受けています。最近20年間に世界各国のむし歯が減少した最大の要因は、水道水フッ素化を中心としたフッ素の適正利用です。日本はフッ素利用が遅れ、むし歯大国という指摘を受けています。

この事実について、NHK解説委員会の見解を教えてください。

 

C 日本歯科医学会〔会員8万人の歯科では最高の学術機関〕は、「フッ化物応用についての総合的な見解」 に関する答申(平成11年11月)において、 「国民の口腔保健向上のためのう蝕予防を目的としたフッ化物の応用を推奨する」 と明言しています。

この事実について、NHK解説委員会の見解を教えてください。

 

D 日本歯科医師会は、「フッ化物応用(水道水へのフッ化物添加)に関する見解」を、平成12年12月21日付で発表しました。その見解において、水道水フッ化物添加は各地域(自治体)の問題であり、地域の関連専門団体および住民の合意を前提としながらも、「水道水フッ化物添加が、各種フッ化物応用の中で、有効性、安全性、至便性、経済性等に対する公衆衛生的に優れた方法である」 と再表明しました。

この事実について、NHK解説委員会の見解を教えてください。

 

E 秋庭賢司氏の所属する 「日本フッ素研究会」 は、水道水フッ素化だけでなく、フッ素洗口、フッ素配合歯磨剤、フッ素塗布などの局所応用についても、一貫して反対を続けてきた団体です。

むし歯予防のためのフッ素の局所応用について、NHK解説委員会の見解を教えてください。

 

 

F 番組中で 「発癌性の心配があるということについてはどのようにお考えですか」との質問をしていますが、NHK解説委員会の見解を教えてください。また、食品中のフッ素や人体に含まれるフッ素〔13番目に多い元素〕について、どのように考えればよいのでしょうか。

G番組中で 「フッ素化するとフッ素を添加していない水道水を選択できないということについてはどのようにお考えですか」との質問をしていますが、NHK解説委員会の見解を教えてください。

以上

 

【連絡先】

社団法人 富岡甘楽歯科医師会 事務局

〒370-2343

群馬県富岡市七日市640-1

富岡甘楽口腔保健センター

TEL 0274-62-1706 FAX 0274-64-1646

 

または、

専務理事 萩原吉則 〔萩原歯科医院〕

TEL 0274-74-3735 FAX 0274-74-6464