禁煙宣言

「タバコのない世界」を目指して

日本口腔衛生学会  2002年9月13日

 喫煙は喫煙者本人よりはもとより周囲の非喫煙者の全身の健康に悪影響を及ぼすことが、数多くの科学的根拠により明示されている。口腔保健の面からも、喫煙は口腔がんや歯周病のリスク因子であることが証明されており、歯の喪失との関連性も認められている。また、喫煙者の多くは、歯周治療、インプラント処置や抜歯後の創傷治癒などの予後が不良であることが指摘されている。さらに、無煙たばこの使用が、口腔にとって高い危険性があることが明らかにされている。しかし、喫煙問題に対する本学会員や口腔保健医療従事者の認識は十分とは言えず、口腔保健医療機関における喫煙対策も遅れており、また、国民への情報提供も不足している。
 一方、口腔保健医療従事者が喫煙対策に関わる利点として、以下のことが挙げられる。@口腔疾患の有病率が高いため、あらゆる年齢層の人々に接する機会が多い。A定期歯科健診等の際に繰り返し介入を行うことができる。B歯科医師および歯科衛生士による口腔保健指導の中に介入を組み入れやすい。C口腔は自分自身で直接見ることができるので、動機付けが行いやすい。D喫煙による全身疾患の症状がまだ現れていない段階で介入することができる。
 一般社会では喫煙対策への関心は高まっており、WHOは「たばこ対策」を最優先課題として取り組み、また、わが国においても、健康日本21の「たばこ」や「歯の健康」、そして健康増進法等において、喫煙対策の重要性が 謳われている。
 このような背景をもとに、日本口腔衛生学会は、「たばこのない世界」を目指して、積極的に喫煙対策を推進することを宣言する。
活動方針 
1.喫煙対策に関連する研究を一層推進するとともに、得られた知見を積極的に社会に還元する。
2.本学会員および国民に対して、喫煙の口腔への健康影響について知識の普及を図り、喫煙と健康問題への認識の向上に取り組む。
3.口腔保健医療活動の場において、禁煙誘導や禁煙支援の推進を図る。
4.口腔保健医療機関や医育機関におけるたばこのない環境づくりを支援する。
5.口腔保健医療従事者の育成機関における禁煙教育の推進を図る。
6.禁煙を推進する諸団体との協力・強調を通じて、たばこのない社会づくりを推進する。