『九州スポーツ』紙にフッ素の良い話題掲載

九州スポーツ 7月2日(月)号  新連載 歯科医のコツ 

治療最前線教えます フッ素の功罪 @」 

第1回 世界一虫歯が少ない小学校

 最近、虫歯予防に最善といわれる水道のフッ化物(イオン化したフッ素)利用実施への動きが活発化している。厚生労働省では、昨年度から「歯科疾患の予防技術・治療評価に関するフッ化物応用の総合的研究」を実施。そのなかで、水道水のフッ素の添加についても検討が行われている。

 虫歯予防とフッ素研究の第一人者・日本大学歯学部衛生学教室の小林清吾教授はいう。「フッ化物は、自然界に存在するミネラルの一種。水道水の中にも天然に含まれています。このフッ化物をちょうどいい濃度で摂取すると虫歯予防になるため、米国では1945年から調整による水道水のフッ素化濃度の適正化かが進められました。98年時点で、天然と調整を合わせて世界61か国で行われています」

 世界ではフッ化物による虫歯予防が当たり前。しかし、日本では、子供のころから歯磨きの習慣があり、虫歯菌を増殖ざせる砂糖の消費量も、欧米に比べて年問一人平均で約2分の1と少ない。ところが、虫歯は減らない。「12歳児の虫歯の平均数を比ぺてみると、米国やオーストラリアなど先進国は1本台なのに、日本は2・4本。日本の歯磨きの普及率は世界一でも、虫歯が多い。それは、虫歯ができる3つの要素のうち、ひとつだけ予防に欠げているものがあるからなのです」

 虫歯ができる3つの要素とは@糖分を多く摂る、A虫歯菌の増殖、B歯質が弱くなること。このうちBに対する予防が、日本では欠けているという。「歯質を左右するのは、遺伝的なものもありますが、後天的に、すなわら歯が生えてから丈夫にする方法として、世界的にフッ化物が利用されているのです、日本では、一般的にこの部分が欠けていため、虫歯が他の先進国に比べて多くなっていると考えられます」

 フッ化物を利用するか否かで、本当に差が生じるのか、小林教授は、「ある小学校では、世界一虫歯が少ない状態を実現しています」という。それは、新潟県の弥彦小学校のこと。1970年から週一回、全児童に低濃度のフッ化物溶液によるうがいを実施している。また、虫歯の危険度の高い歯については、歯ブラシの届かない歯の溝を清掃し、薄いプラスチック状のもので埋める「シーラント」を行った。すると、96年には9割の児童が全く虫歯のない健康な永久歯を保つに至る。

 「新潟県では、県と市町村が協カし、約半数の保育園(38%)と小学校(56%)でフッ化物溶液によるうがいが実施され、またいくつかの地域では、6か月ごとの定期健診とシーラントの組み合わせで、児童の虫歯が飛躍的に減りました。方法は簡単で効果は絶大」つまり、フッ素による予防が加わると、日本人の虫歯は激減する。しかし、フッ化物にもリスクはある。それは次回に紹介しょう。〈特別取材班〉

 


九州スポーツ 7月3日(火)号 新連載 歯科医のコツ 

「  治療最前線教えます フッ素の功罪 A」 

第2回 すすぎが多いと虫歯に逆効果

 市販の歯磨き剤やうがい液に入り、虫歯予防に役立つと注目を集めるフッ素。しかし、使い方を誤れば、効果がないどころか逆効果にもなりかねない。日本大学歯学部衛生学教授の小林清吾教授はいう。「1900年代初頭、米国ではフッ化物が多く含まれる水道水を飲まないほうがいいとされました。歯の色がまばらになったり、チョコレート色になる斑状歯になるからです。ところが、その後の調査・研究により、フッ化物が多く含まれると班状歯になるが、少な過ぎると、虫歯になる割合が増えることも判明したのです」

 その後、水道水におけるフッ化物の適正濃度は、1ppmと判明。1リットルの水に1mgのフッ化物が溶けている状態で、虫歯予防効果があり、問題となる斑状歯にもならない。この結果を基に、世界61か国で水道水のフッ化物膿度の適正化が進められている。日本ではフッ化物の水道法の水質基準はO・8PPmの上限が設定されているだけで、虫歯予防のための適正化も図られてはいない。

 一方、市販の歯磨き剤では、フッ化物は1gに対して1mg。一日一回行ううがい液の場合は10ccに対して2.3mgが溶けている。極めて高濃度なのだが…。「多いように見えますが、歯磨き剤やうがい液は、洗ってから吐き出してしまう。体に吸収する量は、小児が豆粒大の歯磨き剤を用いた場合は、0.1mg程度とごくわずかです」

 フッ素がいいからと、たっぷり歯磨き剤をつけて1日に何度も洗う。あるいは、子供などがゴクンと飲み込むと、ケースによっては、フッ化物を摂取し過ぎてしまう可能性が生じる。また、すすぎを3〜4回とブクブクすると、フッ化物は口の中に残らない。正しい使い方をしなければ、効果は期待できないのだ。

 「米国の栄養学では、フッ化物について、大人はー日3mgの摂取がちょうどいい量とされています。水の摂取量はおよそ大人一日2リットル。水道水のフッ化物濃度が1リットルに1mgで適正化されると、水の摂取量とその他微量にフッ化物が含まれている食べものから摂取することにより、ちょうどいい量を安全に利用できるのです。」

 日本では、4つの自治体が、水道水のフッ化物濃度の適正化を検討中。これから、「水道水へのフッ素添加で発ガン性はないのか」「調整のためのフッ化物と天然のフッ化物に差はないのか」など、反対や心配な人に対する説明が大切である。

 「米国をはじめ世界中の学会で、基準濃度のフッ化物の安全性について、長年研究が行われ証明されているのです。日本でも他国に遅ればせながら、ようやく水道水のフッ化物濃度の適正化が検討され、近い将来、実現できるでしょう。」

 ただし,歯磨きは必要なのであしからず。(特別取材班)