山下文夫先生3年忌、宮崎で催される

 平成14年(2002年)7月13日(土)18時より、宮崎県都城市の都城ロイヤルホテルで、山下文夫先生を偲ぶ会が開催されました。お父様の山下愛之助さん、奥様の美秋さんと宮崎県子供の歯を守る会有志の共催で、フロリデーションの実施にむけ、尽力をされながら、志半ばで2年前になくなられた山下文夫先生の3年忌が行われました。
 小生は,所用のため出席できず残念でしたが、晴佐久先生や田浦先生より報告を受けましたので、このページを借りて、在りし日の山下先生をおしのびしたいと思います。また、山下文夫先生を偲ぶ会でのソウル大学教授 金鐘培先生からの哀悼の言葉も、載せさせていただきます。【山本武夫】


 山下文夫先生を偲ぶ会に行って

 713日に山下先生の3回忌があり、宮崎に行ってきました。台風が近くに迫っていることもあり、うだるような蒸し暑さで、この蒸し暑さが、山下先生が亡くなられたときのことを思い出させます。偲ぶ会当日には、160名近くの方々が集まり、韓国からは金 鐘培先生が来られていました。今も尚、皆さんの心の中に山下先生が生き続けていることを実感しました。
 次の日には山下先生のお墓参りに雨の中で向かいました。行くときは雨だったのですが、着いたとたんにすっかりと雨が止み、まるで山下先生が私たちを歓迎しているかのようでした。お墓の写真は、口腔衛生学会雑誌の7月号の巻頭言に掲載される予定です。
 早いもので山下先生が亡くなってから2年がたち、全体的にフッ素に関する誤解がなくなりつつある感もありますが、フロリデーションはまだ実施されていません。現在は、山下先生をはじめとする歯科保健関係者が「フロリデーションの曲解・誤解」という「厚い壁」に穴を空け、もうフロリデーションというものが見えているにもかかわらず、まだその厚い壁を突破できないという状況でしょうか。
 しかし、一歩踏み込めば他にも壁に穴が空き、連鎖的に穴が広がってくるような気がします。韓国では、国際空港で有名なインチョン空港がある人口200万人のインチョン市でフロリデーションの実施議決が可決したそうです。
 20世紀、ドイツを東西に分断したベルリンの壁。そのベルリンの壁に最初の穴を空け、第一歩を踏み込んだ人がいるのでしょう。福歯大口腔保健学  晴佐久 悟】
  山下文夫先生3回忌の哀悼の言葉
                       韓国国立ソウル大学教授 金鐘培
 山下文夫先生!私は韓国ソウルから参りました金鐘培です。あなたはいつも私のことを兄貴と呼んでいましたね。もはやそれもかないません。私にとっては堪え難いことでしたが、あなたが一昨年に急逝された時には悲しみにうちひしがれてしまいました。あなたの3回忌にあたり、あなたの奥様、御両親並びに多くの人々を残してあなたが旅立たれたことに改めて深い悲しみにしたっております。奥様の美秋さん、御両親の山下愛之助、トシコ様御夫妻にはひとことの慰めの言葉もありません。
 山下文夫先生!あなたは住民の、住民による、住民のための正真正銘の地域に根ざした歯科医師でした。まさに、日本国民の歯の長命と口腔保健の向上に貢献しました。さらに、1990年代には、日本は言うに及ばず、国際的にも口腔保健分野で大活躍されました。また、日本人の歯を失う主な原因であるむし歯予防のために首都東京を含む多くの都市で水道水フッ化物濃度適正化が実現するように働きかけを行ってきました。
 当地宮崎においても地域住民から敬愛されてきました。日頃、あなたは宮崎の都城の住民を誇りにしていました。地域住民のために様々な努力を行ってきました。その結果として、あなたはすべての人々から敬愛されてきました。あなたと地域住民は相互に敬愛していました。
 ソウル国立大学予防および公衆衛生講座ならびに大韓民国国立口腔保健研究所は霊前にあなたの貢献を賞賛する賞徳碑をお送りしました。また、死後になりましたが、あなたは2001430日にオレゴン州ポートランドで開催されたAAPHDアメリカ公衆歯科衛生協会と州地域歯科官協会の第2回合同年次総会で国際的に公衆歯科に際立った業績のある人に授与されるAAPHD2001特別賞を受賞しました。
 御承知のように、私は1984年以来、日本と韓国の人々の歯の長命と口腔保健の改善のために、山下文夫先生、境 脩福岡歯科大学名誉教授はじめ日本の多くの仲間たちと国際的な横のつながりを築いてきました。特に、1990年以降には、私たちは良きパートナーとなり絆を深めてまいりました。私は山下文夫先生が日本のフロリデーションの発展に尽くされたことを良く知っております。また、あなたの公衆への貢献に関して、あなたは多くの日本人と歯科医師から尊敬されていました。私はあなたが日本人の、日本人のための公衆衛生を重んじる歯科医師であると思っています。
 さて、フロリデーションと学校をベースとしたフッ素洗口(フッ化物洗口)は最も効率的なむし歯予防方法として知られています。これらの公衆衛生的な方法はむし歯予防を行う場合に、個人ひとりひとりを対象としたむし歯予防の方法よりも効率的で、かつ効果的であります。それにもかかわらず、日本では一向にフロリデーションは行われませんでした。したがって、あなたは本を出版して公衆衛生の重要性を述べて日本のフロリデーションの展開を主張しました。さらに、その本にフロリデーションの効果、安全性、経済性、実用性、平等性についても書きました。私はその本によって日本の読者はフロリデーションの効果、安全性、経済性、実用性と平等、ならびに都市部でのむし歯予防にフロリデーションが有益であると理解したものと思います。
 一昨年11月にあなたが生前に企画した日F主催のむし歯予防全国大会が東京で行われて成功を収めました。さらに、境 脩名誉教授はじめ多くの仲間たちは今後とも日本におけるフロリデーションの実現のために努力を重ねて行くもの思います。きっと、近い将来日本でフロリデーションが実現するにちがいありません。
 慎んでお祈り申し上げます。山下文夫先生!安らかに。