2001.1.24 NHKラジオ第1放送「ラジオ夕刊」速報

NHKラジオ第1放送午後6時からの「ラジオ夕刊」で、水道水フッ素化について放送がありました。村田幸子解説委員のわかりやすい説明です。藤野先生より原稿を頂いたので以下にその内容を紹介します。

アナウンサー(男子)

「私はですね、子供のときからむし歯に悩んでまいりまして、特に治療というとカラっきり意気地がなくて、とにかくいたいのが大の苦手にしてきました。最近は3度の食事の後の歯磨きの励行で、まあ何とか小康を保っているというような感じなんですけれども、どうですか、長谷川さんは。」

アナウンサー(女子)

「私も子供の頃ころはいつも歯医者さんに通うと、あのキーンという音を聞くともう今でもなんとなく身が・・・。」

アナウンサー(男子)

「あっそう。痛いのがいやでしょう。」

アナウンサー(女子)

「なんとなく困るような気がしますね。」

アナウンサー(男子)

「そのむし歯を予防するためにですね、現在、世界56カ国で水道水のフッ素化ということが行なわれていまして、日本も実施することになったそうです。村田幸子解説委員に来てもらいました。」

アナウンサー(男子)

「村田さん、水道水をフッ素化というのは、どういうことなのでしょうか。」

村田幸子解説委員

「上水道に、自然の状態でフッ素が含まれているわけですね。それを、むし歯予防に適している濃度に調整する・・・」 

アナウンサー(男子)

「ははあ、」

村田幸子解説委員

「少ない地域には添加、それから最適な濃度以上に含まれているところは減らす、そして地域全体でむし歯予防に取組む公衆衛生的な施策なんですね。フッ素がむし歯に効く、いいというのは大体知られていますね。」

アナウンサー(男子)

「そうですね、歯医者さんなんかに行くとね。」

村田幸子解説委員

「そうです。それは、むし歯の初期、つまり歯のカルシウムやリンが溶け出した段階で再び健康な歯に戻してくれる修復作用がたいへん強いというのが、フッ素の働きにあるんですね。」

アナウンサー(男子)

「なるほど」

村田幸子解説委員

「こういうむし歯予防に効果があるというのが1930年代、米国においてです。」

アナウンサー(男子)

「もう70年も前に、おお。」

村田幸子解説委員

「ええ、それを水道水に応用したのが、1945年で、もう55年以上歴史がある。それから全米各地、世界に広がってきた方法なんです。」

アナウンサー(男子)

「ほう、ただどうなんでしょう。水道にフッ素を入れるとなると安全性はどうなのかなあと。」

村田幸子解説委員

「不安というのは残りますからね。この安全性に関しては過去たくさんの実験が行なわれて、再三確認されています。WHOは1969年に、実行し易く、安全かつ効果的な公衆衛生手段であると認めまして、その後3回にわたって水道水フッ素化でむし歯予防を実施するよう勧告を行なっているわけです。それから、国際歯科連盟もむし歯の発生を安全にかつ経済的に抑制する手段としては最も有効な公衆衛生的な施策であるということで、安全性に関して認めているというところです。ただ、重要なのは安全で効果的にむし歯を予防するためにフッ素の濃度をどのくらいに調整するか。」

アナウンサー(男子)

「ああ、なるほど。」

村田幸子解説委員

「それが、最適な濃度、指摘濃度といわれますけど、それは米国の学者の5年間にわたる調査で1ppmということがつきとめられているんです。1ppmというのは水1リットルの中に1ミリグラムのフッ素が含まれることなんです。ただ、その最良とされる濃度はその地域の気温が熱いところなのか寒いところなのか、これによって影響されますので、地域によって多少違ってくるわけです。

米国では。0.7から1.2ppmの範囲で実施されています。そして、現在全国民の65パーセントにフッ素化された水道水が供給されています。2010年には75パーセントまで実施したいという目標を掲げています。

それから、多くの方がいらしたと思いますが、香港・シンガポールでは100パーセント、マレーシアでは70パーセントの普及率です。

今、国を挙げて水道水フッ素化に取組んでいるのがお隣の韓国です。現在総人口の12パーセントに供給されていまして、2003年までには韓国政府は32.7パーセントにまで持っていきたいということを計画しています。なぜ、韓国がこんなに力を入れているかといいますと、むし歯が減らずに治療費用が急激に増加しているということがあるんですね。治療中心から予防中心に重点を置いた施策に変えるために1995年に国民健康増進法を制定します。更に、昨年1月には、口腔保健法を施行して水道水フッ素化を進めていくことを法律で制定しています。」

アナウンサー(女子)

「ずいぶんフッ素化が進んでいるなあという感じがするんですけど、そのように日本もフッ素化を勧めていくということですか。」

村田幸子解説委員

「そうですね。昨年沖縄県久米島に具志川村というところがあるんですが、ここは人口が4500人くらいの村です。ここが、水道水フッ素化を行ないたいという意向を厚生省に示して支援を要請したんです。それに対して、厚生省は安全で効果的な方法について協力するという方針を示したので、実質水道水フッ素化を行うということが決まったわけです。今後、2002年の実現を目処にしまして、国の水質基準では、フッ素濃度の上限を0.8ppmと決めていますので、その範囲内でむし歯予防に適した濃度を調べる。それから、濃度コントロールの仕組みはどうあったらいいか、器材はどういうのを使ったらいいか、ということを研究することになっています。

更に、先週、厚生労働省は水道行政の責任は自治体が担っていますが、厚生労働省は希望する自治体に対して技術支援の要請に応じたいという内容を全国衛生部長会議で示しました。

それから、これまで日本歯科医師会が水道水フッ素化に積極的ではなかったんですけど、昨年末に水道水フッ素化は有効性、安全性、経済性等に優れた公衆衛生手段だという認識をはじめて示しました。」

アナウンサー(女子)

「WHOの勧告から30年以上も経ってから実施するというのはどういう背景なんですか。」

村田幸子解説委員

「これまで、日本ではむし歯を予防するためには公衆衛生という観点ではなく、個人の自助努力を求める、そして、むし歯になったら早めに治療をというようなことが行なわれてきたわけです。そして、平成11年度の保健福祉動向調査を見ますと、そういうことをやってきて毎日歯を磨くという95.4パーセント、ほとんどの人が毎日歯を磨くということになりました。ところが、この1年で歯科診療を受けた人の内容を見ますと、むし歯の治療がおよそ60パーセント、抜けた歯の治療19.4パーセント、依然としてむし歯に悩まされて歯を失っているということなんです。

国は今、予防に重点を置いた国民健康づくり運動である健康日本21を勧めているんですが、その中で歯科保健対策の重点目標80歳で20本の歯を残そうという、8020運動を実現しようとしていますが、現実は8005ですから、とても8020などおぼつかない。」

アナウンサー(女子)

「8005ということは、5本しかないのですか。」

村田幸子解説委員

「それでは、とても今のやり方ではだめです。」

アナウンサー(男子)

「村田さん、フッ素化に関して不安というものがありますし、反対運動がありますよね。」

村田幸子解説委員

「民間団体が、早くもこういう動きに対して反対しています。過去には、訴訟問題なども起こっています。米国や韓国でも、いまだに根強い反対運動はあるんです。それをどうやって乗り越えてきたかといいますと、国、政府機関、歯科医師会、大学

関係者の足並み揃った努力で国民がフッ素に関する正しい理解を深めることができるようにリーフレットやポスターを作って配布するわけです。それから、住民や政策決定者に対しても説明を行なうなど情報提供をしてきたわけです。そんなリーフレットなどには、水道水フッ素化がなぜむし歯予防に役立つのか、とかお金が余りかからない、米国では年間1人にかかる費用が50セントと、50円ちょっとですね、ということが書かれているわけです。

日本でも、主婦連など民間の団体が反対の表明をしているんです。理由として、癌になるとか、心臓病になるというというようなことを行っています。こういった安全性に関しては、これまでさまざまな研究結果で否定されてきているわけですが、フッ素に対する理解がない、なんか怖い・不安と思ってしまっている。

だから、公衆衛生的にみんなが毎日飲む水をフッ素化することは、まず不安を取り除く、住民が同意することがまず大事です。まず、日本でやらなければならないことは情報提供、きちんと住民が理解できるフッ素に関する情報提供を、これをやはり国、政府機関、歯科医師会、大学関係者が米国や韓国のように徹底してやることが重要です。」

アナウンサー(男子)

「昔から医学の中でも、予防は治療にまさるということがありますがそのとおりだと思います。」

村田幸子解説委員

「21世紀は予防というのが大きな目的です。」

2001年1月24日午後6時からのNHK第1放送ラジオの「ラジオ夕刊」に続いて,NHK総合テレビの午後11時50分からの「あすを読む」でも、「水道水フッ素化」が取り上げられ、まさに、NHKは,真の公共放送として,フッ素に関する正しい情報公開を行う姿勢を示し、マスメディアの見本たらんと名乗りをあげた1日でした。