NHKラジオ『水道水フッ素化について』放送(2000.10.27朝)

2000年10月27日(金)朝 8時6分から15分まで、NHKラジオ第一放送の「ラジオ朝一番」という番組の『時の話題』で、村田幸子解説委員が、韓国の取材を含め,ホットな話題として『水道水フッ素化に』ついて、すごくわかりやすく解説されました。

録音テープより,文章にしたものを日F事務局,藤野先生より頂いたのでこのページに,早速載せます。(2000年10月28日)

(テープより)

 韓国では、水道水をフッ素化してムシ歯をなくすことに、今、国を挙げて取り組んでいます。今朝は、村田幸子解説委員に聞きます。

 アナウンサー 「まず、水道水をフッ素化とは、どういうことでしょうか。」

 

 村田 

「ムシ歯予防にフッ素が効果的ということはよく知られていますね。歯磨剤などにもフッ素が含まれていますから。水道水フッ素化というのは、水道水にムシ歯を予防するのに適した濃度にフッ素を添加して飲み水として利用することなんです。

 日本では、歯をみがいてムシ歯をなくしましょう、つまり自分で努力しましょうというのが重点施策になっていますが、それよりも、国民全員が効果的にムシ歯をなくすには、地域全体で集団で取り組む公衆衛生的な方法が望ましいわけで、それが水道水フッ素化ということです。

 フッ素は、もともと自然界に存在する物質で、とくに煮干や小魚などの海産物、お茶や野菜などに多く含まれています。フッ素はムシ歯の初期、つまり、歯のカルシウムやリンが溶け出した段階では、再び健康な歯に戻してくれる働きをする、予防に効果的な働きをするというわけです。」

 

 アナ 「しかし、水道水にフッ素を入れることに、安全性に関して不安や抵抗をもつ人も多いと思うのですが。」

 

 村田 

「安全性に関しては、フッ素の量の問題が非常に大きく関わってくるのですが、ちょうどよい濃度は、その地域の気温などによってちがってきます。例えば、韓国では0.8ppmくらいがいいだろうといわれています。

 水道水フッ素化に関しては、WHO(世界保健機関)も、実行しやすく、安全かつ効果的な公衆衛生的手段であると認めて、1969年以来、75年、78年と再三にわたって『水道水フッ素化でムシ歯予防を実施するよう』と勧告を行なっています。

日本では、日本歯科医師会が1971年に、『フッ化物によるムシ歯予防の推進こそ最良の方法』という見解を出していまして、その効果とか安全性、経済性においては、多くの国際専門機関が推奨しているムシ歯予防法というわけです。」

 

 アナ 「韓国では、いつごろから水道水をフッ素化しているのでしょうか。」

 

 村田 

「はじめて実施されたのは、1981年に鎮海市からはじまって、今年6月現在では31の地域で531万人にフッ素化された水道水が供給されています。これは総人口の12%にあたり、韓国政府は、2003年までには総人口の32.7%、3人に1人までにフッ素化した水道水を供給するように計画しています。

 このように、力を入れている背景には、ムシ歯が減らずに治療費用が急激に増加したということがあります。そこで治療中心から予防に重点をおいた施策に変えるために、1955年に『国民健康増進法』をつくって水道水をフッ素化事業を行なうことを明確にしました。さらに今年1月には口腔の健康増進を目的とした『口腔保健法』が施行されて、水道水フッ素化事業を拡大していく方針を打ち出しています。

 今回、私は、陝川(ハプチョン)という農村部を取材したのですが、ここは今年1月から実施して、およそ11,000人に供給されています。事業費は、施設整備とかフッ素濃度自動測定機などを用意するので1000万円。これは国と地方自治体で半分ずつ負担しています。施設の管理には3人の職員があたっています。今年12月に実施1年になるので、どういう効果が出ているかを調査する予定ということでした。

 その効果に関しては、1982年から実施している清州(キョンジュ)では、18歳の歯科治療費が、実施していない地域と比べて4分の1になったといいます。

 それから、釜山(プサン)市、ここは大都市でまだ実施していませんが、今年6月から52の市民団体が連携して、水道水フッ素化と障害者の歯の健康増進を目的に、いま市民運動をくり拡げています。『水道水フッ素化でムシ歯を減らそう』と書いたゼッケンをつけて、日曜毎に活動をしたり、リーフレットをつくって市民の理解を求めるキャンペーンを行なっています。

 このように韓国では、国が法律をつくり、歯科医師、大学関係者、市民が一体となって、ムシ歯予防のために水道水フッ素化することに取り組んでいます。」

 

 アナ 「いま水道水をフッ素化している国はどれくらいあるのですか。」

 

 村田 

「国により普及率の違いはありますが、世界で57か国です。最初に実施したのが、アメリカ・ミシガン州のグランドラピッツ市で、1945年です。50年以上も前です。その後、全米各地に、そして世界に拡がっていったのです。アメリカでは、現在50都市で実施されて、1億5000万人、全国民の65%にあたります。この人たちにフッ素化された水道水が供給されています。

 アメリカでも強力な反対運動があったのですが、公衆衛生庁、日本の厚生省にあたります。ここに所属する国立衛生研究所とか防疫センターなどの政府機関や歯科医師会などが、水道水フッ素化を支持して、国民がフッ素に対して正しい理解を深めることができるように、いろんな情報提供を積極的に行なってきました。例えば、水道水フッ素化がなぜムシ歯予防に役立つのか、あまりお金がかからない、などの情報リーフレットを出したり、ポスターをつくったりして国民に配布したり、国民の理解を深める努力をしてきたのです。

 

 アナ 「世界の57か国が実施していて、日本の歯科医師会も認めているということなんですが、日本では実施されていないのですか。」

 

 村田 

「日本はWHO勧告の共同提案国となり、3回の勧告とも賛成している立場ですが、国も日本歯科医師会もその実現には力を入れてきませんでした。それから、フッ素に関する情報提供も行なわれてきませんでした。

 ただ、ここにきて厚生省も、水道水フッ素化を行なうことに踏切りました。沖縄県久米島の具志川村、人口4500人の村ですが、ここが地方自治体として行なうなら、安全で効果的な方法について技術援助する、つまりお金を出す、という方針をきめたわけです。でも、ではいつ実施するかは、目処が立っていない状況です。

 そこで、自治体によっては、自分ところの独自予算で行なうというところが出てきました。水道行政は自治体の仕事ですので、自治体が『やる』と決断すればできるわけです。国の水質基準では、フッ素濃度の上限を0.8ppm (1リットルの水の中に0.8ミリグラムのフッ素化合物がある)と定めていますから、それ以内で実施することは法的に問題がないわけです。

 現在、群馬県甘楽町、栃木県西方町、東京都町田市などが、予防に力を入れるのだと、独自に実施することを検討しています。

 8020運動というのがあって、日本では、80歳で20本の歯を残そうという運動を行なっていますが、現実は8005で、80歳で5本しか残っていない。というわけで、いくら目標を掲げても、ムシ歯で歯をなくすことを防いでいかない限り、8020の目標は達成できないわけです。

 ムシ歯ができてから治療するのではなくて、できないように予防する、個人でがんばりましょうと自助努力を求めるだけではなくて、公衆衛生的な観点から、国民みんながムシ歯をなくせる取り組みをすることが大事だと思いますね。そのために、韓国やアメリカのように、フッ素に対する正しい情報を国民に提供する、それから、国、歯科医師、大学関係者がお互いに歩調をそろえて、生涯にわたる国民の歯の健康を守るのだということに取り組む姿勢を示して欲しいと思います。」

 

 アナ 「なるほど、ムシ歯も、治療中心から予防に移らなければいけないということですね。」

 

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