―第22回WHO総会決議文―
弗素化と歯科衛生
[第22回WHO総会決議WHO
22.30 1969年7月23日]
第22回世界保健総会は、執行理事会決議EB43.R10に基づき事務局長の提出した水道水の弗素化に関する報告を審議し、
齲蝕が多くの人口集団に蔓延し、また、ますます多く発生していることを念頭において、数か国における研究が、一貫して弗化物が供給水の中に自然に適当な濃度である場合にはこの疾患の蔓延度が著しく低いことが示されていることを想起し、
現在、この操作に経験のある国々から水道水中の弗化物濃度を適当なレベルに調節することは、実行しやすく、安全かつ効率的な公衆衛生的な手段であるとする報告を了承し、
全人口に対し、歯科衛生の観点から弗化物の効果をもたらすには、これ以外に同等の有効手段がないことに注目し、
この問題に関する広範な科学的文献中に、適当な濃度の弗化物を含む水道水を用いることが、人間の健康に悪影響があるという証拠が全く認められないことを強調し、
数か国において、権威があり、かつ別個に行われたいくつかの調査が、すべて上記と似た結論に達していることを認め、
さらに、多くの人口集団にとって、安全な水の供給が第一の要件であることを認め、
1.事務局長に対し、その報告を感謝し、
2.加盟国に対して、水またはその他の原因に由来する弗化物の摂取が、特定人口にとって適量以下である場合の地域社会供給水の弗素化の可能性について検討し、また、可能な場合には、これを実施すること、ならびに地域社会供給水の弗素化が実現困難な場合には、歯科衛生対策として弗化物を用いた方法について研究するよう勧告する。
3.事務局長に対し、齲蝕の病因論、食品中の弗化物含有量、飲料水中の適当な濃度の弗化物の作用機序、および天然フッ化物の過度の摂取の影響に関する研究の奨励を継続し、その結果を世界保健総会に報告するよう要請する。
4.事務局長に対し、この決議について、すべての加盟国の注意を喚起するように要請する。
―第28回WHO総会事務総長報告―
フッ化物添加と歯科衛生
[第28回WHO総会事務総長報告 1975年5月29日]
概要
本事務総長報告は1974年1月執行理事会によってなされた要請(1974年1月22日執行理事会決議EB53.R30)に応じて提出されたものであり、次の事実をもととしている。
〇発展途上国における歯科齲蝕問題の急激な増加
〇齲蝕予防フッ化物添加事業に対象者数と全世界人口との大きな差
〇様々な種類のフッ化物の安全な使用のより科学的な証明
〇フッ化物添加が、学校単位のプログラムだけでは入手できない所で、使用される
新しい技術処置の向上と合法化
〇予防措置を有効に講じられないことから生じる歯科医の過度の負担
第28回世界保健総会は執行理事会決議EB53.R30に基づき事務総長の提出した、水道水へのフッ化物添加の促進その他の歯科齲蝕予防法および歯科齲蝕病因・予防研究の支援に関する報告を審議した。
食生活の変化、特に精製炭水化物の摂取率の増加に伴う世界的な歯科齲蝕予防の重要性を認めた。
いかなる国であっても単に歯科治療サービスを提供するだけでは歯科齲蝕問題を解決することは期待できないことに注目した。歯科齲蝕予防措置としてフッ化物を使用することの安全性および効果に関する資料は十分入手したとみなした。
最適含有量のフッ化物を含む水道水は最も効果的であるとされている歯科齲蝕予防方法であるが、第22回世界保健総会以後、飲料水中のフッ化物含有量が不十分でフッ化物添加が不可能な地域においてフッ化物の諸利点をとり入れたそれ以外の方法が開発され、かつまた(あるいは)テストされたことに注目した。
世界保健機関は、安全な水の供給について加盟国を援助し、その事業をすすめるにあたって歯科衛生面を考慮に入れることが重要であることに留意した。
多くの加盟国は水道水へのフッ化物添加その他のフッ化物利用措置を組織的な齲蝕予防事業にまだ十分とり入れていないことに注目した。
1. 事務総長に対しその報告に感謝する。
2. 次のことを勧告する。
(a) 事務総長提案事業の実施
(b) 公認の歯科齲蝕予防措置、特に水道水への最適濃度フッ化物混入の推進
(c) 加盟国の国家的齲蝕予防事業の企画と実施を支援
3. 国家の保健事業に歯科齲蝕予防事業をとり入れることを緊急重大事とみなすよう加盟国に要請する。
4. 事務総長に下記の事を要請する。
(a) 予算計上財源および非予算計上財源より本事業用の財政援助を得られるよう努力すること。
(b) 事業の進展状況、特に歯科齲蝕予防事業の人口集団に対する効果について定期的に世界保健総会で報告すること。
提案は、次の三つの部分から成り立つ。
(1) 地域の水道水のフッ化物添加と、歯科齲蝕予防のその他の方法を増強するプログラムの作成
(2) 病因学、歯科齲蝕の予防および関連諸問題の共同研究および調査の計画
(3) 予防活動と研究活動を連携させる情報収集と情報流布システムの計画
これにより、各国の予防および研究がより効果的、より有用になるからである。
いうまでもなく、この計画は各会員国がこの問題に取り組む準備ができているかどうかにかかっている。
それによって、WHOの歯科保健プログラムが、3つの統合活動プログラムが指示しているように、実行されうるのである。会員国によるこの分野の活動およびWHOによるその後のプログラムの立案は、すべての先進国での最頻発の病気であり、発展途上国でもそうなりつつある。
歯科齲蝕の発生を低下させるという長期間の目標と共に、世界保健総会(World Health Assembly)に託されている。
各国が、研究機関を設け国家保健局の齲蝕予防活動の計画とプログラム作成を補佐することが提案されている。
会員各国が、予防プログラムを遂行し、国の特定の目標への進歩の評価において自国の資源を動員する場合は、要請があればWHOは会員各国に援助を与える。