日本歯科医師会雑誌 Vol.55 No.1 2002-4
4月号 「都道府県歯科医師会だより」 p.54

「フロリデーション」 沖縄県 長嶺 和弘

 平成14年3月2日(土)沖縄県具志川村農村環境改善センターにおいて沖縄県、具志川村、社団法人沖縄県歯科医師会の主催する水道水フッ化物応用シンポジウムは開催された。具志川村は、那覇市より西方94キロの東シナ海にある離島で、人口が3,000人位の規模である。
 シンポジウムは、基調講演に長崎大学医学部長の斉藤 寛先生の「水道水フッ化物濃度の適正化」と米国国立疾病予防センター水道水フッ化物添加国家担当主任技師トーマス・リーブス氏の「米国および世界のフッ化物利用の現状」の講演の後、「水道水フッ化物応用シンポジウムー健康長寿を目指してー」と題して沖縄県歯科医師会会長喜屋武 満氏、公立久米島病院院長西平竹夫氏,朝日新聞編集委員の田辺 功氏、具志川村健康づくり推進協議会会長喜久里 猛氏によって行われた。
 このシンポジウムの開催のきっかけは、全国に先駆けてフロリデーションが、久米島で行われようとしているからである。当地で開業する沖縄県歯科医師会会員の玉城民雄先生が平成3年より小学校の児童生徒にフッ素洗口を行ったことであった。当時12歳児のDMFT指数が全国で4.2、沖縄県が6.3、久米島は7.6であった。それが9年後の平成12年には、全国2.6、沖縄県4.3、フッ素洗口を行った具志川村の12歳児のDMFTが1.9になった。
 そこまでにたどり着くのに玉城先生,その学校の養護教諭、その他関係者の努力は並々ならぬものがあったと推察するが、その結果は村の住民を動かすほどのものであった。その盛り上がりがフッ素濃度適正化を村議会において検討させることになった。その後、具志川村、沖縄県、沖縄県歯科医師会と一緒になり厚生労働省に協力を依頼してフロリデーションを推進していく体制が整えられた。
 それからフロリデーション実施に向けて住民の合意形成を積極的に行うため、自治体において何回も繰り返し繰り返し勉強会や説明会を行っていった。全国にさきがけて水道水フッ素化の実施ということで村民もナーバスになっていること、さらには、一部の反対運動家たちによって住民が動揺していること、など実施までには、時間がかかりそうだ。
 久米島のフロリデーションを早く実現するには、全国のあらゆる市町村においても久米島のようなフロリデーション実施にむけた目に見える動きをスタートすることが強い追い風になるのではないだろうかと思う。

 日本歯科医師会雑誌の4月号に、沖縄県歯科医師会広報担当理事の長嶺先生の具志川村の水道水フッ化物応用シンポジウムの報告が載りました。もっともこのシンポジウムは、日本歯科医師会が後援して、来賓としての臼田日本歯科医師会会長の言葉(新井公衆衛生担当常務代読)もあったので、当然のごとく、日本歯科医師会会員に伝える義務があります。
 このような県歯科医師会あげての支援をしている沖縄県を、他の都道府県は見習ってもらいたいものであります。会員の中には、全く予防に無関心の輩もおり、国民にとって何が大事であるかを日本歯科医師会自らが示せないで、国民から歯科医師会が受け入れられる要素があるはずがないのです。
 この,沖縄県の長嶺先生の後に、兵庫県の小寺先生の「8020の医療費節減効果テキメン」という記事を、どのように日本歯科医師会会員は受け止めるのであろうか。医科・歯科のレセプト調査で医療費全体で21%の減、特に肺炎では327%の減、だそうです。つまり8020達成者は健康であることを裏付けています。より多くの人が8020を達成するために、その基本であるむし歯予防をより効果的に進めるためには、公衆衛生的に優れた水道水フッ素濃度適正化を進めることが国民にとって最大の幸福となるのです。
 「誰にでもできる 小さな努力で 確かな効果」沖縄県具志川村は、町村合併の問題が絡んで、水道水フッ素濃度適正化が4月以降の検討課題になりました。今でも、全国で一番実現に近いところにありますが、長嶺先生の記事にもありましたが、一部の反対者に惑わされず、全国で、推進できるよう歯科医師自身が、このニュースを理解し、専門家として国民に正しい情報を提供できるように頑張ってほしいものです。それが、全国各地での自治体の水道水フッ素濃度適正化推進の検討につながるようにしていかねばなりません。(山本武夫)