富山県におけるフッ素洗口実施施設数の年次変化

小椋正之 竹内智子精田紀代美山本武夫 (富山県厚生部健康課母子・歯科保健係 富山県歯科医師会** ) 

この論文は,平成12年7月22日(土)新潟市小針の明倫短期大学で開催の,平成12年度日本口腔衛生学会甲信越北陸地方会総会で,富山県厚生部の小椋正之先生が発表されました。

小椋先生に了解を頂きましたので,HPに載せました。

富山県におけるフッ素洗口施設数の推移について,ご覧下さい。

【目的】

 富山県では平成7年度に「いい歯カムカムすこやか富山」をキャッチフレーズとした「富山県歯の健康プラン」を策定し、歯と歯ぐきの健康づくりを総合的、体系的に推進してきている。本プランに基づいた「むし歯予防パーフェクト作戦事業(以下、「作戦事業」という)」の内容は表1に示したとおりであり、妊婦から中学生のむし歯予防に取り組む市町村に対して県単独で補助(補助率:1/2)を行っている。

 作戦事業の評価として、平成8年度から平成10年度に作戦事業を実施していた12市町村のう蝕有病者率や一人平均う歯数(41.8%、1.8本)は、作戦事業を実施していなかった15市町村(47.8%、2.3本)に比較して低い値を示したことは昨年度の本学会で発表したとおりである。本研究では、作戦事業の評価の一環として、作戦事業実施とフッ素洗口実施施設数との関係を明らかにすることを目的とした。

【方法】

 各市町村から提出された作戦事業の実績報告よりフッ素洗口実施施設数を算出した。

 また、平成8年度から平成11年度に作戦事業を実施していた20市町村(以下、「実施市町村」という)と実施していなかった14市町村(以下、「未実施市町村」という)とでフッ素洗口実施施設数の比較を行った。

【結果】

 富山県におけるフッ素洗口実施施設数の年次変化を図1に示した。平成7年度の実施施設数は52施設であったのに対して、平成11年度では91施設に増加していた。

 作戦事業の実施・未実施別フッ素洗口実施施設数の年次変化を図2に示した。平成7年度及び平成9年度は未実施市町村の方がフッ素洗口実施施設数は多かったが、平成11年度では逆転して実施市町村の方が多くなっていた。

 また、平成11年度の施設別のフッ素洗口実施割合を表2に示した。フッ素洗口実施割合は保育所・幼稚園、小学校、中学校ともに実施市町村の方が未実施市町村よりも高い値を示した。

【考察】

 平成7年度と平成11年度のフッ素洗口実施施設数を比較すると、富山県全体では約1.8倍に増加していた。実施市町村では21施設から57施設と約2.7倍になっていたのに対して、未実施市町村では29施設から32施設と約1.1倍しか増加していなかった。また、保育所・幼稚園、小学校、中学校のいずれの施設においても実施市町村の方が未実施市町村よりも高いフッ素洗口実施割合を示した。

 これらのことから作戦事業の実施・未実施によってフッ素洗口実施施設の増加に差があることが認められ、フッ素洗口実施施設を増加させるために作戦事業が有効であることが示唆された。