フッ化物の骨肉腫の一連の情報についての解説(NPO法人日F会議)
<この問題に関して;2005年の経緯> 皆様御存知のように、この問題は昨年にも取り上げられていた内容(日本でも記事が発信されました)であり、新規なニュースではありません。 <2005年7月のフロリデーション60周年記念シンポジウムのとき> このバッシン論文(当時は未発表)に関する質疑が行われていました。 既に、CDC<ADA,NIDCRは次々にフロリデーションの安全性の声明を発表してきました。 <そして2006年> バッシン論文がCancer Causes Controlという雑誌に掲載され、これをネタにしたものと考えられます。 このページでは、この一連の報道(HPのあるサイトに取り上げられたもの)から、歯科関係者や一般の人などに不安が広がる恐れもあり、解説を加えるものであります。 <関連資料>このページに順に掲載しました。 資料@ フロリデーション・ファクツ2005の質問28 フロリデーションは癌の原因となったり、その増殖を促進しますか? 答 一般的に広く受け入れられている科学的事実によると、ヒトの癌発生率と飲料水の至適濃度のフッ化物との関連性はありません225) 。 関連 “米国癌学会は‘癌発生とフロリデーションとの関連を示す科学的根拠はない’と述べています。” 資料A CDC声明(2005年10月24日) フッ化物と骨肉腫との関連についての論文について、これに関するCDC声明です。この発表には科学的根拠が少ないとしています。下記のサイトから英文のアクセスができます。 http://www.cdc.gov/oralhealth/waterfluoridation/safety/nrc_report.htm CDC Statement on Water Fluoridation and Osteosarcoma 水道水フロリデーションと骨肉腫に関するCDC声明 資料B ADA声明文(2005年9月29日) この問題に関して、ADA(アメリカ歯科医師会)も同様の注意(誤った発表と)をしています。 資料C ADAコメント(2006年4月7日) この関連の研究発表がされてもしっかりとレビューをして、フロリデーションを支持していくことを確認するとのコメントを出しています。 資料D 「フッ化物と骨肉腫研究にまつわる特段の注意を!」 Cancer Causes Control(2006)17:481-482 LETTER TO THE EDITOR 元になる研究の発表者の上司、ハーバード大学チェスター・ダグラス教授の、同じ雑誌に掲載された「バッシン論文」に対する編集者への手紙です。 資料E バッシン論文「少年期におけるフッ素添加飲用水の摂取と骨肉腫の関連に関する研究結果」 Cancer Causes Control に掲載されたものを、アメリカの一部マスコミが取り上げ、それをこの4月、この研究には詳しくない日本の医学系サイトが取り上げました。 |
資料@ 「フロリデーション ファクツ2005」より 質問28 フロリデーションは癌の原因となったり、その増殖を促進しますか? 答 一般的に広く受け入れられている科学的事実によると、ヒトの癌発生率と飲料水の至適濃度のフッ化物との関連性はありません225) 。 事実 質問23参照 1990年には、米国国立癌研究所(NCI)の研究員達は36年間の米国におけるフロリデーションと癌の死亡率および15年間隔でのフロリデーションと癌発生率について評価しました。フロリデーション水を用いている地域での230万人の癌死亡者と125,000の癌の症例を調べた結果、研究者たちは癌発生のリスクとフロリデーション水の飲用には関連性がないとの結論を発表しました84)。 2001年、日本の調査者たちは1987、1992、1997年にWHOの国際癌調査機関が発表した癌のデータを分析し、フロリデーションは様々なタイプの癌のリスクを増加させるかもしれないと結論付けました245)。しかしながら、この分析に用いられた方法は、フロリデーション地区とフロリデーション未実施地区の癌のリスクとして妥当なファクターの数に大きくかつ明らかな違いが認められることから本来欠陥のあるものでした。例えば、フロリデーション地区とフロリデーション未実施地区での都市化、社会経済的状況、地理的な状況、職業、産業、食生活、医療環境、タバコの利用の違いをこの分析では補正していません。このように、これらのさまざまな違いがある地区を比較して癌のリスクを説明する際には補正のないものはすべて科学的に不適切となります。 “米国癌学会は‘癌発生とフロリデーションとの関連を示す科学的根拠はない’と述べています。” 米国癌学会が発行した“フッ化物とフロリデーション”の中で「癌発生とフロリデーションとの関連を示す科学的根拠はない」と述べられています225)。 |
資料A <CDC声明文> バッシンらの論文がCancer Causes Controlに掲載されたことを受けて、即刻CDCは声明文を出しました。(2005年10月24日) http://www.cdc.gov/oralhealth/waterfluoridation/safety/nrc_report.htm |
CDC Statement on Water Fluoridation and
Osteosarcoma 水道水フロリデーションと骨肉腫に関するCDC声明 骨肉腫は稀な骨癌の一タイプです。米国では年間約400名の小児と青年が骨肉腫と診断されており、そのうちの約250名(約6割)は男子です。 若年男児における飲料水中のフッ化物摂取と骨肉腫の発症(新たな症例)との(観察された)関連性がAge-specific Fluoride Exposure in Drinking Water and Osteosarcoma (United States) (Bassin et al., 2006)という表題の論文で報告されました。女児ではこのような(フッ化物と骨肉腫の発症との)関連は全く観察されませんでした。著者らが探索的分析と称したこの研究(ではあっても)が出たことにより、この(フッ化物と骨肉腫に関する領域)の話題に関する科学的な知識ベースが必要となります。 著者らは、この研究には限界があるので、観察結果の是非を確認するために、更に研究が必要であることを認めています。 この論文は、ハーバード大学医歯学部と他の協同組織によるフッ化物と骨肉腫を研究するために、15年間にわたる一連の研究のうちの初期段階の症例の分析に基づいています。一連の総合的な研究責任者(チェスター・ダグラス教授)はバッシン分析の結果を過大に解釈したり、普遍化しないように警告を発しており、骨肉腫症例に関する第二の研究段階の予備的な分析では、(バッシンらの)結果を再現していないと考えられることを強調しています(Douglass et al., 2006)。今後の分析を基とする刊行物によって、骨肉腫とフッ化物摂取との関連性があるかどうか、またどの程度かに関する詳細な情報が提供されるものと期待されます。 これまで水道水フロリデーションと骨肉腫に関する多数の研究が発表されてきました。その都度、専門家から成る独立委員会、包括的な系統的なレビュー、および個別研究の結果のレビューを評価して、科学的な証拠の重みづけでは、う蝕予防に至適な飲料水中フッ化物濃度と骨肉腫を含む癌リスクとの関連性を支持していません。 In a report issued in March 2006, Fluoride in Drinking Water: A Scientific Review of EPA’ s Standard, the National Research Council (NRC, 2006)では、当時未発表であったバッシンらによる分析データを含み、フッ化物と骨肉腫に関するすべての入手可能な根拠を考慮しました。 NRC( 米国国立研究評議会)委員会では、骨肉腫に関する総合的な根拠は雑多であることを見い出し、飲料水中の現状の許容フッ化物濃度の改訂に関して(骨肉腫の発症という)健康問題に関連する勧告を全く行っていません。この報告書では、より大規模なハーバード大の研究結果が公表されれば、この(フッ化物と骨肉腫)状況に関連する科学的根拠の重みに重要かつ有用な追加資料になるであろうと述べています。 CDCの任務は、健康をモニターし、健康上の問題点を検出および調査して、健全な公衆衛生施策の開発と唱道を行い、予防的方策を履行し、保健行動を推進し、安全で健康に優れた環境を育成することです。 しかも最優先の目標と関心事は公衆の健康と福利を守ることです。 CDCは、絶えず、国民の健康の保証と保護に対する責任の一端としてフロリデーションに関する科学情報をモニターして評価します。CDCは、科学界の専門家と共に、利用可能な発表された研究を論評して、水道水フロリデーションに関連する他の科学的開発をモニターし続けて、さらに大衆に対してフッ化物に関する支援と推奨を行ってゆくでしょう。 CDCは、う蝕の予防とコントロールし、全身の健康の改善に繋げるために、安全で有効な公衆衛生手段としての水道水フロリデーションを強力に支持し続けます。水道水フロリデーションは他の公衆衛生プログラムと個人的な歯科ケアにアクセスし難い人を含む、すべての年齢層と社会経済層の人々のためになります。CDCは20世紀における10大公衆衛生業績の1つとして水道水フロリデーションをあげました。.フロリデーションに関する情報Recommendations for Using Fluoride to Prevent and Control Dental Caries in the United Statesは以下のウェブサイトにアクセスして、さらに学習して下さい。 www.cdc.gov/oralhealth. なお、文中の( )内については、日本語訳にあたり一部追加しています。 |
資料B フロリデーションと骨肉腫に関するADA(米国歯科医師会)声明 米国歯科医師会からの情報(01); 既に、米国歯科医師会は昨年(2005年9月29日)にADA Positions & Statements声明文を出していました。 ADA Statement on Water Fluoridation and Bone Cancer 日本語訳は添付しています。 この段階では、バッシン論文は未発表の段階でした。 |
ADA Positions &
Statements フロリデーションと骨肉腫に関するADA(米国歯科医師会)声明 メディアによると、ハーバード大学の博士課程の学生がまとめた未発表の研究論文で、フロリデーションと思春期男子に稀に見られるタイプの骨肉腫の発生の間に関連性が示唆されていると報じています。ハーバード大学医歯学部は、担当教授がそれらの調査結果は誤り伝えられているという告発を行うと発表しました。 ADAは長年にわたり、安全で効果的なう蝕予防手段としてフロリデーションを支持しています。米国疾病管理予防センターはフロリデーションを20世紀の十大公衆衛生業績の1つに挙げました。フロリデーション研究により、15-40%のう蝕を予防することが示されています。ADAはひとりの研究者の未発表の研究による結論に対して歯科専門職、公衆衛生関係者、および国民に注意を喚起します。実は、その女学生はこの研究論文には限界があること、またこの調査結果は他の研究データで確認される必要があることを記述しています。例えば、この研究対象者が実際に摂取したフッ化物量を正確に反映していないのかもしれないとも述べています。 水道水フロリデーションに関するADAポリシー方針は膨大な量の信頼性の高い科学的な根拠に基づいています。 その根拠は広範な科学的調査に依拠して、しかも広く購読されている査読制度のある専門雑誌に発表されています。 研究では、ヒトの発癌率と飲料水中の至適フッ化物濃度には関連が全くないとの結論を下しています。 ADAは口腔保健に関係する事象に対する科学的な調査研究を奨励し、支持して、しかも歓迎します。しっかりと研究開発をモニターし続けて、必要に応じてCDCが国民の安全を確保するために求められると確信する段階の情報を国民と歯科専門職に提供するでしょう。 科学を基盤とする専門家のリーダーとして、ADAは新たな科学情報を先取し、科学界に共通する規準に従って新情報を発表する機会を歓迎します。 |
資料C ADAコメント 米国歯科医師会からの情報(02); バッシン論文は先週にCancer Causes Control(2006)に掲載されましたが、実は先々週(2006年4月7日)にADAはニューズリリースしておりました。 以下に、日本語拙訳を添付と併せて送信します。 http://www.ada.org/public/media/releases/0604_release02.asp |
ADA Reaffirms Support of Water
Fluoridation 米国歯科医師会(ADA)は水道水フロリデーションに対する支持を再度是認する シカゴ、2006年4月7日 - 飲料水中のフッ化物と骨肉腫(稀なる骨がん骨癌の一種)の関連性を示唆するまもなく公表される論文をレヴュ−した後も、ADAは水道水フロリデーションはう蝕予防に安全かつ効果的な公衆衛生手段であることに確信を持って堅持します。 ADAは、今回の調査結果の是非(追認あるいは否認)を確認するために科学的な検証を必要とする“探索的分析”であると認めている論文の著者らと同じ考えです。この論文データは今年の夏以降に公表される予定となっていた、ハーバード大学医歯学部によるより大規模な包括的15年間の研究の一端に過ぎません。大規模なハーバード大学研究の総括責任者はフッ化物と骨肉腫の総合的な関連が認められないことを示唆している研究の全貌が明らかにならないうちは(フ化物と骨肉腫の関連性に関する)結論を下さないようにアドバイスしていたと述べています。しかも、(カッコ付き)“関連性”は限定的な研究でたった一つに認められたもので、因果関係を確立するために必要な科学的な基準でも最低のレベルでした。事実上、フロリデーションに関する60年以上に及ぶ厳密な科学的研究を振り返っても、科学的根拠の膨大な重みを持ってしてもフッ化物と骨肉腫との関連を見出していないのです。 |
資料D フッ化物と骨肉腫研究にまつわる特段の注意を! Cancer Causes & Controlsに掲載されたフッ化物と骨肉腫に関わる今回の論文は、現在私たち(チェスター・ダグラスら)が研究遂行中のフッ化物と骨肉腫についての先行研究の一部を分析した結果から得られた内容です。したがって、「年齢特異的な飲料水中のフッ化物摂取と骨肉腫」というこの論文は、本研究過程の一面を示しているに過ぎません。 私たちは種々の理由で、この論文の調査結果を解釈する際に、読者に特段の注意を払うように喚起したいと思います。既にこの論文の著者らは自ら、当該論文の症例の調査結果は再現性がないと考えられることを第二の研究で収集された症例を追加した結果で認識しているという付記をこの論文の最終パラグラフに書いて警告を発してきました。 フッ化物と骨肉腫に関するハーバード大学医歯学部の研究は、NIEHS(米国環境衛生科学研究所)、NCl(米国癌研究所)、NIDCR(米国歯頭蓋学研究所)およびハーバード大学の共同で15年間実施されてきました。骨肉腫症例とその対照群は2回に分けて収集されました。まず、l992年に研究が開始されました。最初の研究の症例群は1989年から1992年の間の既存の骨肉腫症例を集め(後ろ向き研究)、そして、第二の研究では1993年から2000年の間における新規の骨肉腫発症例を集めました(前向き研究)。バッシンらの論文は1989年からl992までの症例のうち年齢特異的な調査結果をまとめたものです。私たちも、また最初の研究の総合的な(年齢特異的でない)分析においてフッ化物と骨肉腫とのいくつかの正の関連性を見つけています。しかしながら、第二の研究(1993-2000)の症例の総合的な分析による予備的な調査結果では、最初の研究の総合的な調査結果を再現しているとは考えられませんでした。私たちの研究結果は現在のところ公表の準備途上にありますが、フッ化物と骨肉腫との総合的な関連性を示唆していません。実は、骨肉腫症例は同じ提供元の同一の整形外科のある同一病院から、また同一の病理学部で骨肉腫の診断を行い、さらにまたフッ化物摂取について同様の方法を用いて基本的に収集されてきたので、このことは特に重要であると考えられます。 私たちは、現在、完全な分析的なデータ群を集積していて、初回研究のために収集した症例と過去に計画した分析と比較を行っています。私たちは第一の研究の正の調査結果の再現あるいは再現性の欠如を見出すまで、すべての主要な発見の公表を遅らせてきています。この研究発表過程における私たちの役割のモデルはリチャードド?ル卿で、彼のタバコと病気の関連に関する公表は再現性があることが明らかになるまで拒絶されてきました(2005年7月26日のニューヨーク・タイムズ)。発刊するには、重要すぎて、しかも予期できないものでした。ド?ル教授は最初の調査結果を再現できました;ところが、私たちの初回の研究データには骨標本がないので再現できません。そして新たな症例における骨標本は、飲料水の中のフッ化物含有量と骨肉腫との関連性が乏しいことを裏付けているように思われます。興味深いことに、雄ネズミで骨肉腫を認めた以前のNIEHS研究の追試が行なわれて最近、NIEHSウェブサイト[1]にアップされました。彼らの今回の研究の調査結果は、これまで幅広く引用された元のNTP研究結果[2]を追認していません。極めて高濃度のフッ化物を含有する飲料水は雄雌のネズミの骨肉腫に関連していないことがわかりました。また、特に成長期にあたる、年齢特異的なフッ化物の摂取についての併行した分析が、私たちの研究の第二の症例群で本研究チームによって行なわれています。したがって、読者はバッシンらの調査結果を普遍化して、過大な解釈を行なわないように注意すべきであり、(フッ化物と骨肉腫に関する)結論を下す前に、しかも、とりわけ(フロリデーション)に関連する政策決定にも影響を及ぼすことのないように、(私たちの)全体的な研究結果の刊行を待つように配慮していただきたい。 (NPO法人日本むし歯予防フッ素推進会議 訳) なお、文中の( )内については日本語訳にあたり、一部追加しました。 |
資料E専門医療ニュース
Does Fluoridation Up Bone Cancer Risk? 飲料水へのフッ素添加は骨肉腫リスクを高めるか? 提供:WebMD 少年期におけるフッ素添加飲用水の摂取と骨肉腫の関連に関する研究結果 Daniel DeNoon WebMD Medical News Reviewed by Louise Chang, MD 【4月6日】フッ素を添加した飲用水を摂取した男児は致命的な骨肉腫の発現リスクが高い、と新規研究結果が示唆している。 Elise Bassin, DDSは、ハーバード大学の博士論文として2001年に本研究を完了した。Bassin博士は現在、ハーバード大学において口腔衛生政策および疫学の講師を務める。この研究は、『Cancer
Causes and Control』5月号に掲載されている。 予想外の結果 「この結果に驚いた」とBassin博士はWebMDへの声明において述べている。 研究の注意点 一方、Bassin博士の論文に関する論説では、この結果を多少割り引いて受け取るよう注意が促されている。皮肉にも、この論説の著者はハーバード大学教授Chester
W. Douglass, DMD, PhDである。Bassin博士が博士論文として本研究を発表した際、承認を与えたPhD委員会で先導的な役割を果たしたのがDouglass博士であった。 |