毎日新聞 2001年1月15日(月曜日)

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フッ素で虫歯が減ったよ

仙台市青葉区柏3の私立新坂通幼稚園(星野艶子園長)は、1993年2月から毎週1回1分間、園児にフッ素洗口を施し、虫歯予防の実をあげている。適量の量と濃度ならフッ素にまさる予防法はないというのが世界の常識。公衆衛生的な予防策として水道水へのフッ素添加にゴーサインを出したが、同園は先見の明があったようだ。【小原博人】

クチュクチュ 週1回1分間  仙台の幼稚園 8年で虫歯5.5本→3.1本

フッ素洗口とは適量のフッ素入り飲料水で1分間ほどクチュクチュうがいをする虫歯予防法だ。園児たちは毎週水曜日の退園時間前、フッ素水を1人6ccづつコップにもらいクチュクチュして吐き出す。6cc中のフッ素量は5.4ミリグラムで、濃度900ppm。そのうち口に残るのは1割か2割程度。全部誤飲しても危険性のない量であり、濃度だ。

こうした虫歯のない園児は右肩上がりに増え、虫歯の本数は逆に減った。年長児を例に取ると洗口開始早々の93年4月には、虫歯のない子は15%余りに過ぎなかったが、昨春は44%までに増加した。

虫歯の本数は5.5本から3.1本に減少した。年中児も同じ軌跡を描いている。同省が一昨年行なった歯科疾患実態調査では虫歯のない5歳児は36%、6歳児は22%となっている。

星野園長は、東北大学予防歯科の田浦勝彦講師(10年以上水道水フッ素化運動に携わっている)に勧められ大方の保護者の賛同で踏み切った。フッ素剤は同講師が調整し、安全管理も徹底。現在は160名の全園児が洗口している。

「奥歯には細かい溝があり、歯磨きだけでは歯垢を取り除けないと聞いたのが始まり。治療以上に効果的な予防が大事。ずっと続けます。」と星野園長。仙台市内では他に20園が送れて洗口を開始。成果をあげている。

田浦講師は、「口中のイオン化したフッ素が虫歯を防ぐことが証明されている。水道水や食塩に入れたり、タブレットを配布したりと、世界の大半の国ではフッ素を上手く使っている。新坂通幼稚園のデーターは、フッ素を適量な範囲内でより多く使う効果が出たものだ」と説明する。

同省は従来、歯科医師過剰時代に虫歯患者が減るのは困る、という日本歯科医師会の本音を受け、安全性に問題はないとしながらもフッ素利用に消極的だった。それが突然水道水フッ素添加実現に取り組む自治体(沖縄県具志川村、群馬県甘楽町など)を支援する方向に転換した。21世紀型のむし歯予防政策への端緒であり、洗口を含めたフッ素花盛りの時代がやってきそうだ。