長崎新聞 2001.8.26(日曜日)

フッ化物の安全性についての考え方  新庄文明 (長崎大学歯学部予防歯科学教授)

利用者が是非を選択  虫歯減るが審美的影響  

 フッ化物による虫歯予防の是非で話題になるのが安全性です。危険性を説く人があれ ば、安全性に問題はないという人もいます。

 どんなに安全と思われている物質でも害 を生じますし、効果や安全性は個体により異なります。 また一般に、急性毒性を示す量よりはるかに少量で慢性中毒が生じ、微量でも遺伝や 生殖機能に影響ある物質も多く判明していますので絶対に安全といえるものはないと いえます。そこで何事によらず、マイナスとプラスとを天秤にかけて「利害のために はある程度の不利害は我慢してもいい」と判断されるレベルが許容量です。

 むし歯予防へのフッ素の応用は経済性や安全性に十分に配慮した上で実施される なら、発生の抑制が期待されている一手段です。 日本では未実施ですが、地域によって上水道にフッ化物を添加する方法を用いている 国もあります。

 昨年、ヨーク大学の研究グループが入手できるあらゆる学術研究成果を総合的に分析 した結果、現在応用されている上水道のフッ化物添加により約15パーセントの利用者 がむし歯ゼロとなる一方で、約12パーセントに斑状歯などの審美的影響が現れ、自覚しない程度の歯牙フッ素症は48パーセントに出ると報告している。 全身影響については175の有害性に関する研究を総合的に分析した結果、がん、骨 折、ダウン症候群を含めて、明らかに有害とする根拠はないとしています。 ただし、科学雑誌に副作用や効果なしの成績が掲載されることは少なく、「危険が証 明されない」ことと「安全」とは別のものです。

 実際には受け入れるかどうかを判断するのは専門家ではなくて利用者自身であり、米 国でも住民投票で実施や廃止を決めているところが増えているようです。 専門家が現状で得られる限りの情報を提供して利用者が選択すること(イン フォームドチョイス)は臨床医学においても公衆衛生対策に於いても鉄則です。

 また、むし歯はフッ素欠乏症ではないので「フッ素が絶対的に必要」とはいえません の で、英国では予測される被害よりも効果が上回ると想定されるむし歯多発地域に於い てのみ推奨され、全国では約1割の住民がフロリデーションを利用しています。 一方むし歯が減少した欧州ではフッ化物水道水添加を中止したところもあります。

 フッ化物の利用が限られているわが国に於いても近年では虫歯減少効果が見られます。 本県は全国的に見てもむし歯有病者率の高い地域が多いようです。 フッ素洗口などの集団応用などに於いては利用しない児童の人権に配慮することが重 要でが、上水道添加については、?地域の有病状況?住民の保健習慣?口腔保健への関心?専門家や教育者などの社会 資源の現状?上水道や食品のフッ素含有量 などを行政や専門機関が検討した上で住民投票などで判断することが期待されます。 その際口腔衛生に関する認識の向上と併せて予防法とその活用法について周知が図ら れるべきことは言うまでもありません。

 健康とその方法を選ぶのはあなたです。

フッ化物について、住民に不安を募らせる内容です。新庄氏は何の目的で長崎に行っ たのでしょう。着実にフッ素化に進みつつある長崎へ妨害目的で赴任したわけではな いはずです。 長崎大学には、川崎先生、飯島先生という素晴らしい先生方がいらっしゃいます。ま た、松尾先生、有田先生など地域で地道に作業していらっしゃる方がいらっしゃるの です。 その地域に赴任してフッ素反対派と見誤るような記事を書いていいので しょうか。 過日の長崎大学同窓会の学術講演の後の質疑応答でも水道水フッ素化へ邁進する動きに水を差したようなあまりフッ素に詳しくないと誰もが受け取れるよう な質問をしました。 今回は、フッ素に対してマイナスになるような情報を流しています。地域住民の健康を阻害するつもりなのでしょうか。 どうかこんな教授には怯まずに長崎の先生方にはがんばってもらいたいと思います。 (ある先生の怒りのコメントより)