読売新聞富山版 2001511日(金)とやま第3県版 「地域ニュース」より引用   

「教育現場で『フッ素』利用進む」

虫歯予防に効果大  井波小9年間実績 永久歯未疾患児は34%増

虫歯予防に大きな効果があるとされるフッ素に注目が集まっている。県内でも多くの教育機関で、フッ素によるうがい(フッ素洗口)が励行され、児童・生徒の虫歯が顕著に減少している。利賀村では、水道水にフッ素を添加する検討に入り、実現すれば全国でも先進的な試みとなる。学校現場でのフッ素利用を紹介する。(木村達矢)

井波町の井波小では毎週木曜日の朝の会で、フッ素洗口が実施される。

「始めてください」の合図で、同小四年児童は、一口量のフッ素入りの液を口に含み、”クチュクチュ”始めた。一分後、一斉に手洗い場に走り、吐き捨てた。「まずい」「メロン味とか、もっとおいしくしてほしい」。洗口後に出た感想だ。

同校では、一九九二年度からフッ素洗口を導入。永久歯に虫歯のない児童の割合は今年度77.3%。九年間で34.2%も増加した。武田正則校長は「歯磨き指導を特に積極的にやっているわけではないので、やはりフッ素の効果でしょう」と、フッ素パワーに驚く。現在ではほとんど全員がフッ素洗口を行っている。

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東砺波郡内の各小中学校で、虫歯のない児童・生徒の割合を比較すると、フッ素洗口実施の有無で、はっきり結果が分かれる=グラフ参照=。

昨年、永久歯に虫歯のない子供は、フッ素洗口を五年以上実施している小学校ではいずれも七割前後の高割合。一方、未実施校ではそれより約1020ポイント低い。全体的に割合の低くなる中学校でも、フッ素洗口を実施しているかどうかで、明らかな差が出ている。一人当たりの虫歯数で見ても、フッ素洗口実施校では、未実施校に比べ、少ない。

福光町のとなみ養護学校では、91年から、フッ素の入った液を歯に塗るフッ素塗布を2ヶ月ごとに実施。当初、小学部の一人当たりの虫歯は2.9本だったのが、2000年には0.4本に,中学部でも7.7本から2.1本に減った。


歯の表面修復 科学的に証明

うがい、塗布90教育施設で

フッ素は自然界に広く存在する元素。口内細菌が溶かした歯の表面を修復する「再石灰化作用」があり、虫歯予防に効果があることが科学的に証明されている。

WHO(世界保健機関)は加盟国に対し、水道水フッ素化の検討を求める勧告を一九六九、七五、七八年の三回にわたり出した。現在では約五十五年前から導入した米国をはじめ、オーストラリア、韓国など五十六カ国で実施されるなど、水道水フッ素化はすでに世界の大きな潮流だ。

一方、日本では水道水へのフッ素添加を実施する自治体はまだない。最近になって、厚生労働省や日本歯科医師会が、肯定的な見解を明らかにし取り組みに弾みがついた。

県内でも、九四年度に作成された「県歯の健康プラン」を基に、二十二市町村がフッ素利用を推進している。その結果、フッ素洗口や塗布は、現在九十の教育施設で行われている。さらに、利賀村では先月十九―二十一日に村の担当者らが韓国を視察するなど、今年度から水道水フッ素化の検討が始まった。

一方、「歯が白濁する斑状歯になる」「発がん率が高まる」などとして反対する声もある。 

フッ素推進に取り組んでいる井波町の山本武夫歯科医師は、「適量のフッ素摂取は有益な作用しかない」と安全性を強調する。

反対意見に対し、「がん死亡率が高いという研究が以前にあったが、統計処理上の誤りだったことが分っている」と説明。斑状歯についても、「大量のフッ素を長期間摂取しない限り大丈夫。仮になっても、美観上の問題で健康には影響しない」としている。

ただ、水道水に添加されると不安な気持ちになるのも事実だ。

水道法では、水道水のフッ素濃度の上限を0.8ppmと定めている。米国では飲料水のフッ素推奨濃度を0.71.2ppm、上限許容量は4ppmとしている。日本では0.1ppm以下のところが多く、基準以下であれば各自治体の決定で添加が可能だ。山本歯科医師は「世界中でフッ素化が行われており、技術的には何の困難もない」と断言する。

読売新聞北陸支社富山支局の木村達矢記者が、素晴らしい記事を書いてくれました。

学校現場を実際に取材し、子供達のフッ素洗口の様子や校長先生の話、養護教諭の話、子供達の話を聞いておられました。たまたま、私が2年生5年生の歯科健診の日でした。

数字を示してフッ素の効果がわかりやすい記事です。

何よりも良いのは、フッ素洗口やフッ素塗布だけを取り上げるのではなく、今話題の利賀村の水道水フッ素化の調査費に触れ、今後どうあるべきかを訴えかけて、読者に考えさせている点であります。

何が正しいか、読者の判断を得るのは難しいですが、そこで一般的な反対論に答える形で記事になって、良かったと思います。事実をそのまま伝えたい姿勢が見えてきます。フッ素反対論の多くは、一部の出来事(例えば、高濃度フッ素の動物実験の結果や、定性的な問題、1例的なデータを引用)を、すべての事に結び付けて、あたかも必ずそうなるというイメージを読者に植え付けたいというものです。定量的に、条件をきっちり合わせて同じ結果が得られるのが真実の科学です。フッ素反対論は科学的には証明されてないことをいくつも並べています。

今回の木村記者の記事は、今までの賛否両論を併記しなければならないというマスコミの殻を破る、当然あるべき姿の取材であり、記事でした。今後益々、このような真実をベースにした記事や放送が増えることを期待したいものです。

この記事に関する賞賛メールは、以下にお願いします。(山本武夫)

木村達矢記者のメールアドレス E-mail:kimu3058@yominet.ne.jp