部会の動き(小児・学校歯科保健部)

                          「富山県歯科医師会会報 平成12年9月号掲載」

 

 平成7年に策定の今年度を最終年度としている「富山県歯の健康プラン」が、昨年実施された県民歯科疾患実態調査の結果も示され、今、その評価がなされようとしている。そして,今年度中に新しい二次プランが策定され,2010年までの10年間の県民の歯・口腔の健康づくりのために目標や具体的な事業計画があきらかにされる。 現プランで,重点ライフステージの小児に対して,フッ化物の応用を中心とする事業が順調に推移し,その成果はすでに学会等でも発表されている。しかしながら,都市部を中心に未実施の地域も多く,二次プランではこの点も課題となってくる。

 小児・学校歯科保健部会では、二次プランがどのような内容になるかに注目しながら,未実施地区対策、あるいは,国内外のフッ化物情報収集を行い,県民の口腔保健の向上に貢献できるよう,努力を惜しまぬつもりである。

 最近,フッ素によるむし歯予防に対して注目される出来事がいくつか出てきた。しかしながら、これを歯科医師会の会員がほとんど知らされてないので,会えて本会報でお知らせしたい。

 まず,第1は昨年12月に,日本歯科医学会フッ化物検討部会が「口腔保健とフッ化物応用」答申を出し、フッ化物推進に対して日本歯科医学会の承認を得たことである。その内容を要約すると、以下の通りである。

 「フッ素は自然環境に普遍的に存在する元素であり、われわれの生活環境や飲食物にあまねく存在する。こうした自然のフッ化物と口腔保健に関する研究は、20世紀初頭の歯のフッ素症(斑状歯)の発見以来、今日でほぼ一世紀、齲蝕予防のためのフッ化物応用として展開され、水道水フッ化物添加が実施されてからもゆうに半世紀が経過している。その間、水道水フッ化物添加に関して1969年、1975年および1978年に世界保健機関(WHO)から実施勧告が出され今日に至っている。フッ化物の応用は、その有効性と安全性が確認され、世界各国において実施されている。こうした各種の公衆衛生的なフッ化物応用法の普及は、わが国において今後の地域口腔保健向上への重要な課題である。
 歯科大学あるいは大学歯学部では、将来、臨床や公衆衛生の現場で、適切なフッ化物応用を積極的にすすめるカリキュラムの設定が望まれる。また、口腔保健医療専門職は、フッ化物応用に対して常に最新の正確な知識を基に、齲蝕予防におけるフッ化物の応用について積極的なイニシアチブをとり、フッ化物応用による口腔保健の向上を現実のものとし、口腔保健医療に対する信頼を高め、ひろく国民の健康の保持増進に貢献すべきである。」

 

 また、第2はマスコミ関係が,積極的にフッ素によるむし歯予防を記事にし始めたことである。昨年の読売新聞社説や毎日新聞科学欄から始まり,最近では県内版7月10日付け読売新聞夕刊では大きくとりあげられた。また,共同通信社の取材により日本中の地方紙に水道水フッ素化を進めようという記事が配信された。これらは,日本むし歯予防フッ素推進会議(日F会議)の活動を理解したジャーナリストが増えてきたことがあげられ、フッ素を推進する専門団体の地道な行動が評価されたものである。我が県でも「富山県歯の健康プラン」が他都道府県にほとんどないフッ素を推進するプランとして知られており、二次プランがさらに進んだものになるか、これからマスコミも注目するであろう。

 ところで,第3は、国内でも水道水のフッ素化の動きが出てきたことである。厚生省は初めはフッ素検討部会の答申の中のAI(必要摂取量)の研究を盾にすぐに進めることには難色を示していたが、水質基準の0.8ppm以下であれば、自治体の長の判断で出来るという見解を示した。このことから,日本各地の4自治体で来年度以降実施に向けて各方面での動きが始まった。

 中でも,注目されるのが群馬県甘楽郡の2町である。6月25日に,甘楽町で「一生自分の歯で食べるために」と題して歯科保健シンポジウムが開かれた。読売新聞解説委員の馬場錬成氏の座長で、境脩福岡歯科大教授の基調講演の後、毎日新聞編集委員小原博人氏,NHK解説委員村田幸子氏,群馬県富岡甘楽歯科医師会専務理事萩原吉則氏の3氏の講演があり、続いてシンポジウムで水道水フッ素化がメインに話し合われた。その結果,会場に同席した黒沢町長が,最後に「少しは理解していたが,今日の話を聞いて,水道水フッ素化実現に大いに自信を深めた。」と締めくくって閉会した。

 この後、隣の下仁田町でも水道水フッ素化の準備が始まるなど,まさに画期的な歯科保健シンポジウムであった。

 以上のような動きが出てきていることを我々は把握している。このような動きを,日本歯科医師会は情報として持っているとは思うが,広報として流すことはない。残念ながら,国際的に見て,日本が公衆衛生的な見地から大変遅れているフッ化物の利用は厚生省や日本歯科医師会の長年のこういう姿勢にありそうである。

 しかし、本県はすでに「富山県歯の健康プラン」でフッ化物利用が進められており、2次プランでは、真の県民の健康ためにさらにより公衆衛生的な上のレベルの水道水フッ素化まで含めたフッ素利用を盛り込むよう希望する。なぜなら,県内でも,それに理解を示している自治体があるからである。

           (山本武夫)

<参考>

フッ素関係HP

http://www.sun-net.ne.jp/ad/fusso/

http://www.f-take.com

本記事についてのご感想は,山本武夫までお願いいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未掲載原稿(今なぜ水道水フッ素化かーその2−)