金沢市民公開講座 フッ素洗口推進講演会 抄録 平成13年11月7日 TOP
「地域で取り組むむし歯予防〜フッ化物の応用〜」
富山県学校歯科医会理事 山本武夫
21世紀を迎え、ようやく我々歯科関係者は,歯を失う最大の原因であるむし歯や歯周病を予防する方法を手に入れかけています。すでに獲得した海外の先人の情報を伝えるために、努力を惜しまぬ心ある歯科医たちが蔭で活躍しています。残念ながら,過去、日本ではほんの一部しか,情報が知らされなかったのです。1昨年末ようやく日本歯科医学会は、むし歯予防のためのフッ化物応用の安全性の関する議論は出尽くしたとし、今後は国民の健康増進のため,積極的に推進するよう、見解を出し、厚生労働省や日本歯科医師会も水道水フッ素濃度適正化についても、地元の歯科医師会や行政の支持,住民の合意があれば技術的な支援を行うと言う見解を出しました。これにより,沖縄県具志川村は,現在実施に向けて準備中です。
アメリカ,オーストラリア,北欧やアジアなどでは,国家単位で小児のむし歯有病率を
激減させることができました。成功の要にはフッ化物の応用とシーラントがあり、その他代用糖、歯口清掃法、定期健診が工夫されています。
我が国でもようやくむし歯の減少の傾向が見られてきました。しかしまだ先進国に比べ約3倍の多さで、全体的にみると予防の時代はまだ始まったばかりといえます。これからのむし歯予防には市町村を単位とした公的事業と、個人の努力が重なる必要があります。即ち、フッ素利用を基盤とした有効な方法を継続利用できる社会システムの整備と、歯や口の健康を大切に考える個人の動機付け教育が重要です。
富山県では,平成7年度より,県民の健康の基本となる歯と歯ぐきの健康づくりを総合的,体系的に推進するため「富山県歯の健康プラン」を策定しました。この中の「市町村むし歯予防パーフェクト作戦事業」により,幼児期・学童期の歯科保健対策が進められることになりました。
歯を失う悲しみは失ってから初めて分かるもの、かもしれません。今まで、歳をとったら歯を失うことはしょうがない、とあきらめる傾向にありました。しかし、歯は再生能力の無いもので、これを失ってからでは本当の意味で元に戻す方法はないのです。むし歯は小児から高齢者まで生涯を通して人々を悩ませています。8020達成のためには、歯の寿命を長くする方法として,スタート時点である小児からのむし歯予防が最も重要です。そこで、歯を失わないために、また歯の寿命を長くするために、というところから以下のようにお話を進めさせていただきます。
@8020運動と「健康日本21」
A歯喪失原因
B2大疾患
2.健康増進の意義
@公衆衛生:ヘルスプロモーション
Aキーワード「だれでもできる 小さな努力で 確かな効果」
3.地域で取り組む保健活動の重要性
@「富山県歯の健康プラン」計画策定まで
A富山県歯科保健医療対策会議
B県民歯科疾患実態調査
C「市町村むし歯予防パーフェクト作戦事業」
4.フッ化物応用
@フッ素の性質や歴史的背景
Aフッ素の安全性
Bフッ素の有効性(う蝕予防体系におけるフッ化物の役割)
C種々のフッ化物利用法(地域では水道水フッ素濃度適正化,施設ではフッ化物洗口、個人でフッ化物配合歯磨剤、ハイリスク児(者)はフッ化物歯面塗布)
Dフッ化物利用の普及状況
Eフッ化物普及の妨げる要因
@ 反対のための反対
A 知らない中立、責任を認識しない中立
B 歯学教育の問題点
Fフッ化物応用の推奨
@ 国際的専門機関
A 日本の専門団体・機関
5.究極のむし歯予防法
@フルオリデーション:水道水フッ素濃度適正化
A世界で広がる全身応用法
B世界の実施状況(韓国,アメリカなどの実例)
C水道水フッ素濃度適正化と8020運動
「健康はみんなの願いです」
「だれでもできる 小さな努力で 確かな効果」
≪フッ化物応用関係HP(ホームページ)の紹介≫
《フッ化物応用関係書物》
一般・専門家向け
専門家向け
その他(非売品)
当日配布資料
金沢市民公開講座の大事なポイント(メモ)
我が富山県は,かって新潟県を先進県とみて学んだ。しかし,新潟の今はどうか?実績と今後は,必ずしも一致しない。富山県もしかり。
フッ素が,ある県で有効で,ある県で無効なんてありえるはずが無い。ましてや,日本人だけが水道水フッ素濃度適正化やっても害があるなどという話は無い。
(フッ化物の今まで普及しなかった原因)
@ 国,厚生省が保健政策として取り上げなかった。
A 大学研究機関が,研究対象として1部でしか扱わず,また,教育機関としても大学教育にフッ化物応用をとり入れなかった。
B 歯科医師会が積極的に奨めなかった。
(例えば,『健康日本21』について見ると)本来なら,この健康政策は,アメリカの「ヘルシーピープル2000」を参考にしているが,しかしながら,1番大事なパブリック・ヘルス(公衆衛生:歯科ではフッ素の全身応用つまり水道水フッ素濃度適正化など)を取り上げず,個人衛生(フッ素塗布やフッ素入り歯磨き剤)に終始している。国の健康施策が,国民の真の健康を考えるならば,公衆衛生の基本施策をはずすとは,あきらかに間違えている。
血友病の血液製剤のエイズ問題、脳硬膜移植患者のヤコブ病感染など,国の責任が問われる問題は山ほどある。
何が正しいか,しっかり判断できるようにすべきである。視点を国民サイドに置いたものか、歯科医師会サイドのものか,行政サイドのものか見極めねばならない。
また、ライオンをはじめとする,主要歯磨きメーカーも、むし歯予防には,プラークコントロールと,歯磨き第1主義を通し,歯ブラシ購買を強く強く訴えている。視点が,誤っているのである。