DENTAL TODAY 2002年6月1日号 4頁記事内容                    

「学校歯科健診は探針から視診へ」日本学校歯科医会が健診基準を変更

 日本学校歯科医会(日学歯=西蓮寺愛憲会長)が、従来、探針の使用による触診によって行われていた学校歯科健診の基準を見直し、視診を主にして行うとする旨の理事会決定事項を、文書「初期う蝕及び要観察歯=COの検出基準の変更について」(3月28日付)にして、関係加盟団体長あてに送付していたことが、このほどわかった。
 同会では、今後文部科学省と協議したうえで、健診マニュアルを変更し、来年の春の健診から新基準を適応する、としている。専門家の間ではかなり以前から探針の使用について、警鐘を鳴らしていたが、今日、日学歯として探針使用についての判断が示されたといえる。現行では目に見えない初期齲蝕の判定には、探針の使用が明記されていた。裂溝やくぼみの部分を探針でつついて、粘性があれば、初期齲蝕の疑いがありとして要観察歯(CO)、探針が入れば齲蝕(C)と判断する基準となっている。ただ、探針の使用を全面的に否定するものではない、としており、この点を含め日学歯では、平成14年度までに周知徹底を図るとしている。

探針不使用は歯の健康づくりのための 環境整備の第1歩である 

田浦勝彦 (東北大学歯学部附属病院予防歯科)

 新聞報道によれば、日本学校歯科医会(日学歯)は学校歯科健診で「探針」の使用をやめ、視診に切り替える方針を決めたという。これに賛成したい。
 この間を振り返れば、平成6年12月に改正された学校保健法施行規則により、翌7年の歯科健診から要観察歯(シーオー)という基準を設けた。ただし、「探針を用いての触診」を前提にした。当時すでに、探針による歯質への為害作用を指摘する論文もあり、齲蝕予防先進諸国では探針を使わない傾向にあったことを考慮すれば、その後6年間、わが国の小児は不利益を被ってきたことになる。歯質を破壊し、歯の再石灰化を妨げ続けてきたと言っても過言ではない。対応の遅れである。日学歯、文部科学省ならびに関連学会はどのように反省しているのだろうか。
 学校歯科健診の場を介して学童生徒の健康な歯を守り育てる観点から、鋭利な探針の不使用は当然であるが、未解決の問題もある。齲蝕についての考え方をきちんと整理することである。着色歯を齲蝕と判定する歯科医師が未だいるという。「明瞭なう窩をう蝕とし、疑わしくはう蝕としない」これはグローバルスタンダードであるが、これらは探針使用の是非以前の問題である。
 さらに優先すべき課題としては、歯の健康づくりのための環境整備を進めることである。具体的には、脱灰を抑制し,再石灰化を促進するフッ化物の適切な利用(家庭でのフッ化物配合歯磨剤の使用、学校でのフッ化物洗口あるいは地域でのフロリデーション)である。このようなカリオロジーに関連する環境の整備が成ってはじめて、「探針の不使用が生きてくる」


 《上記記事を読んで》
日本学校歯科医会に憂慮(山本武夫のコメント)

 小生はかねてから、いつも考えていたことに、この学校歯科健診時に、その子供を将来にわたっていかに健康に過ごさせるかである。
 だから、われわれの地域において、保育所・幼稚園、小・中学校がフッ化物洗口を実施できたことは大変意義のあることであった。永久歯の齲蝕が激減してきた今、齲蝕の進行を考えた健診も重要である。そして、最初は治療カードだけであったのが、COやGO,清掃不良などの項目が学校の管理の下で十分な指導がなされず、家庭連絡カードでお知らせとして出ても、当初考えたほど、COなどがすぐ治療に回る心配もないことがわかってきた。むしろ、健診時に探針で傷をつけるほうが心配になってきていた。その意味において、この際、フッ化物洗口を実施しているわが地域においては、探針の不使用は子供たちにとっては大変なプラスになると考えられる。
 小生の今までの経験から、絶対に必要なことがある。探針の不使用とフッ化物の応用はセットにしなければならない
 田浦先生の考えは、以前からそれを訴えておられたはずである。
 日学歯に言いたい!
 いつまで、学校でのフッ化物応用の推進に手をこまねいているのか。
 そんな態度だから、日教組養護教諭部会が、30年前とおんなじ反対を続けられるのではないか。